佐々木クリス氏、活躍続く八村塁を分析「成長はすさまじい」プレーオフで「真価が問われる」今後の注目選手も解説
NBAは日本時間15日でレギュラーシーズンが終了し、同17日からは第7シードと第8シードを決めるプレーイン・トーナメントがスタート。そして同21日からはプレーオフが始まり、両カンファレンスから勝ち上がってきた計16チームがファイナル制覇を目指してし烈な戦いを繰り広げる。バスケットボールアナリストの佐々木クリス氏が、WOWOWのインタビューでプレーオフの見どころ、楽しみ方などを独自の視点で語った。 ―現時点ではレギュラーシーズンがまだ終了していませんが、両カンファレンスの上位陣の状況について教えてください。 「セルティックスは圧倒的で歴史的な強さです。エースのジェイソン・テイタムの他にも、ジェイレン・ブラウンがいます。これまではどちらかというと、テイタムが1番手、ブラウンが2番手という印象があったかもしれないですけど、今ではどちらが1番手なのか甲乙つけがたいぐらいブラウンが成長しています。セルティックスは若さゆえに、ターンオーバーなどミスが出てしまうチームだったのですが、そこも改善され穴がなくなっています。ポルジンギスやホリデーは加入1年目ですけど、周囲と以心伝心で1年目とは思えないほどフィットしています。おそらくセルティックスとサンダーが最も現代的な戦術を駆使するチームです。現代的というのは3ポイントを効果的に活用してドライブも積極的に仕掛ける。これはよく自転車の前輪と後輪に例えるのですが、ペイントアタックがないともちろんダメですし、3ポイントを活用することでペイント内の煩雑さを解消する。ここは共存関係があるので、どちらにブレーキがかかっても、最高のオフェンスは構築できず目的地に到達できないことを考えると、この両方がしっかり機能しているセルティックスとサンダーはすごく強いです」 ―17日からプレーイン・トーナメントが始まり、21日からはプレーオフに突入します。注目している選手を教えてください。 「東カンファレンスだと、76ersのエンビードです。出場1分あたり1点以上を超える得点力は、現代バスケでは考えられません。現1位のセルティックスにとって1番の天敵となりそうなのがエンビードです。バックスはリラードです。アデトクンボとコンビ結成1年目で本領発揮できるか楽しみです。そして意外とマジックが下克上を起こすのではないかと注目しています。特にバンケロは要チェックです。彼は現代的なオールラウンダーで、次世代のレブロン・ジェームズに近い要素を持っています。NBA2シーズン目で、しかもパワーフォワードで攻撃をけん引するのは、類まれなる支配力やプレーの読みを持っていると思います。プレーオフになると、バンケロのような大柄なサイズで何でもこなせるフォワード選手が重宝されます。とても良いディフェンスもするマジックのリーダーであるバンケロが、彼らに少し足りないオフェンスの部分で突き抜ける何かを見せてくれるとマジックは台風の目になると思います」 ―西カンファレンスの注目選手を教えてください。 「上位チームについては先ほど話した通りですが、やっぱりレイカーズのレブロンとウォリアーズのカリーですね。レブロンが39歳、カリーは36歳。この年齢で彼らがプレーしていることに感謝して、噛み締めています。彼らが見せるパフォーマンスの生き証人となれること自体が、僕の一つの大きな喜びになっています」 ―八村塁も所属するレイカーズについてお聞かせください。レイカーズはプレーイン・トーナメントに出場すると思われますが、勝ち進んでいくためには、どのような戦い方をすればよいでしょうか。 「2020年にレブロンとデイビスで優勝した時は相手を飲み込む運動能力とディフェンス能力で、そこからファストブレイクで勝つチームという印象があったと思います。デイビスがいるチームは常にディフェンスのチームと思っていて、どれだけそのディフェンスのポテンシャルが発揮できるかっていうのをずっと考えてきましたが、実は今シーズンのレイカーズは2月に入ってからオフェンスがリーグ2位に到達しているぐらいオフェンシブなチームに変貌しました。さらに同じ2月以降だと3ポイント成功率1位がボストンの40.6%で、2位がレイカーズの40%です。この爆発的なハイパーオフェンスを維持するためには、3ポイントが必要不可欠です。デイビスとレブロンの2人合わせたペイント内の得点が1試合で25~30得点。ただそのペイントの煩雑さとか、相手がペイントに集中して守るのを解消するためには、ディフェンスを広げないといけない。その中で今季の八村選手は引き立て役ではありますけども、デイビスやレブロンと一緒にプレーすること、そして彼らと一緒にプレーするためには何が必要かっていうことが、いよいよ腹落ちしてからのパフォーマンスが非常に高いと思います。だからこそ2月15日のユタ・ジャズ戦でキャリアハイの36得点を記録しましたし、32点取った3月28日のメンフィス・グリズリーズ戦ではキャリアハイの3ポイント7本成功させました。これまではキャリアの中では中間距離の2ポイントと3ポイントの日が1対1ぐらいの割合だったところを、今はミドルレンジ1本に対して3ポイントは2本ぐらいと2倍の頻度で3ポイントを放っています。常に3ポイントだけ打っていくとディフェンスも守りやすいですけど、八村選手はドライブする判断が良くなっているので、3ポイントを見せつつ、レブロンとデイビスの合わせで飛び込んでそこからのダンクとかバリエーションが多彩です。こういった判断力とショットセレクションが向上して、レイカーズのオフェンスに上積みを作っています。それがレイカーズにとってすごく大きいことだと思います」 ―プレーオフにおけるレイカーズのキーマンは誰でしょうか。 「プレーオフではラッセルが1番のキーマンです。オフェンスの爆発も彼がけん引しているところが多くあって、ラッセルの得点力がガクンと落ちるだけでチームの勝率も落ちると思います。そのラッセルに次いでカギを握るのが先ほどの八村選手の活躍です。八村選手が先発に据えられてからの25試合は、フィールドゴール成功率が58・5%で3ポイント成功率が44・7%と本当に判断がいいですね。自分が動いたときにパスをもらって、これまではオープンだったらそこで打つか打たないかだけだったところを、最近はディフェンスの動き次第でそこからパスを流すとかそういった幅にも広がっているので、八村選手の成長はすさまじいです。そしてディフェンスの伸びしろを誰が一番持っているか考えた時に、年齢的に厳しいがレブロン自身がディフェンスをすることが一つ目の伸びしろ。二つ目の伸びしろが八村選手だと思います。これが八村選手をラッセルに次ぐキーマンに推す理由です。八村選手は秀でたアスリートでNBAの中でも限られた選手しか持ってないような才能を持っています。オフェンス能力は折り紙付きで、どんどん成長を見せています。あとはNBAに入った時から期待されていた万能なディフェンダーに本当になれるかなれないか。八村選手にとって、真価が問われるプレーオフに大注目です」
報知新聞社