相模原市の“骨抜き”人権尊重条例が可決・成立 差別と闘う義務から逃亡
採決で反対はわずか5人
市民の代表として誤りをただすべき市議会も懸念の通り、害悪を広げた。賛成討論に立った立憲民主は「障害者への差別的言動は過去の実態としてあまりなかった」と差別に向き合おうとしない市の姿勢を追認した。「市長与党」のさがみみらいは「市民の声は分断を生まないような、互いが尊重される条例であってほしいというものだった」と述べ、罰則を求める当事者が分断を招いているかのようにねじ曲げた。構造的な差別でマイノリティを分断しているマジョリティの責任を隠蔽するという意味では二重に悪質だった。 採決では議長を除く45人中、反対は女性議員で作る颯爽の会3人と共産党の2人だけ。何が何でも差別に厳しい条例にはしない本村市長の姿勢は、杉田水脈衆議院議員のヘイトスピーチすら問題視しない自民党への配慮がにじむが、その他の会派も一部を除いて右に倣えした。人権に不見識で無責任な市長あっての骨抜き条例であり、この議会あっての反人権条例なのだった。 本村市長が「72万市民にふさわしい条例」と胸を張るほどマイノリティのための条例ではない、マジョリティのマジョリティによるマジョリティのための条例という反人権ぶりが際立つ。行政・議会はかくも差別と闘う義務から逃れようとする。うそごまかしを許さない「反差別規範」を打ち立てる差別禁止法はだから必要なのだ。答申を活用して各地に条例を広げる取り組みが求められている。
石橋学・『神奈川新聞』記者