故坂本龍一さんが生前最後に手掛けていた舞台作品「TIME」が一周忌となる3月28日に上演スタート
昨年3月28日に死去した坂本龍一さんが生前最後に手掛けていた舞台作品が、坂本さんの一周忌となる3月28日に日本初演を迎えることとなった。 その作品はRYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI「TIME」。前日の3月27日に、上演される東京・初台の新国立劇場 中劇場で公開ゲネプロが行われた。 同作は1999年に日本武道館、大阪城ホールで上演され、約4万枚のチケットが即完売した公演「LIFE a ryuichi sakamoto opera 1999」に続き、坂本さんが全曲を書き下ろし、高谷史郎(ダムタイプ)とコンセプトを考案、創作したもの。2017年から約4年の製作期間を経て、2021年に坂本さんがこの年のアソシエイト・アーティストを務めた世界最大級の舞台芸術の祭典「ホランド・フェスティバル」(オランダ・アムステルダム)で世界初演され、高い評価を得た。
暗闇の中、雨音だけが響く客席。その目の前には水鏡のように揺らぐ水面と精緻な映像を映し出すスクリーンが設えられた舞台が広がる。作品は「時間」というテーマを包括し、夏目漱石の「夢十夜(第一夜)」、能の演目である「邯鄲」、荘子の説話である「胡蝶の夢」といった物語のシーンが交錯し進んでいく。 出演者はダンサーの田中泯、笙奏者の宮田まゆみ、ダンサーの石原淋。この3人のパフォーマンスとサウンド、インスタレーション、ヴィジュアルアート、そのすべてが、光と水が交錯し幻出するいくつもの「夢」とともに劇場空間で融合し、観客にとっては息をのまざるを得ない瞬間が続く。 同作は3月28日から4月14日まで新国立劇場 中劇場で、4月27~28日には京都・ロームシアターで上演される。
なお上演にあたり、ヴィジュアル・デザイン + コンセプトを担当した高谷と出演の3人が主催者を通して以下のようにコメントしている。 高谷史郎 1年前に坂本龍一さんの訃報を知らされたとき、衝撃を受けその現実が受け入れられませんでした。そして亡くなった日が奇しくも『TIME』東京公演の初日である3月28日だということに言葉を失いました。 パルコさんから『TIME』を東京で上演したい、というオファーをいただいたとき、坂本さんも僕もとても嬉しかったし、とても楽しみにしていました。 人生も舞台も一期一会です。坂本龍一さんが遺してくださった素晴らしい音楽、哲学、この素晴らしい舞台に、多くの方が会いにきてくださいますように。 田中泯 本公演が坂本龍一さんの命日と重なる奇遇、ご縁に身が引き締まる思いでおります。坂本さん高谷史郎さんとで練り上げられたこの舞台作品に登場する「人間」として私が選ばれたことは、この上ない喜びと思い、迷わず参加を引き受けたものでした。 坂本さんより「初めて水を見る人類の一人を演じ作品の内にい続けて欲しい」と言われました。 人間の諸元の姿、想い、営み、人類のたどってきた長くて短い歴史の明暗、その上で世界の現在。政治・経済に振り回される世界の現在。人間らしさや本当の人間を求めることはただのロマン・夢想なのでしょうか。本物を愛し欲求していた坂本さんの考える「水の循環」で成立する私たち自然・人間の営みと地球ならではの「時の機微」TIME。 こんな作品の内に漂い佇む人でいることは、私にとってはオドリそのものだと思えたのでした。 オランダ、台湾、と2つの国でも公演を経て、舞台は変化し続けている、と思います。日本の観容の眼前に、劇場の空間に身を晒し、坂本さんの魂に触れる夢中のひとときです。 ご来場の皆様には、是非是非、心も身体も開いて、『TIME』をお楽しみ頂きたい、と願っております。