伝統の早明戦制した明大ラグビーの裏にエディ流チーム操縦術
ラグビーの関東大学対抗戦の早明戦が1日、東京・秩父宮ラグビー場で行われ、明大が36-7で早大に圧勝。25年ぶりとなった全勝対決を制し、無傷で2015年以来、4年ぶり17度目の優勝を果たした。前半は10-7で折り返す接戦となったが、後半に明大が自慢のFW戦でペースを奪い、早大を突き放した。W杯で世界一となった南アフリカを彷彿とさせるようなフィジカルを軸にスピード、ディフェンスを合体させたラグビーだった。昨季は大学日本一を獲得。完全復活した明大を変えたのは、164センチの小さな指揮官、田中澄憲監督(43)の元日本代表監督でW杯ではイングランド代表監督として指揮を執ったエディ・ジョーンズ氏仕込みの手腕だった。
明大伝統の重戦車スクラムで圧倒
試合開始1時間前なのにもう両ゴールポスト裏はぎっしりと観客で埋まっていた。秩父宮ラグビー場は人、人、人…。W杯日本大会で“にわかファン”が急増するなど大爆発したラグビー人気に加え、25年ぶりとなった全勝対決で優勝を争うシチュエーション。伝統の一戦に2万2987人のファンがつめかけた。 前半11分。ファーストスクラムで明大ファンが沸く。3度、4度と、なかなかセットできなかったが、平均体重で2.2キロ上回る明大のプレッシャーに、早大がたまらずスクラムを崩す、コラプシングの反則。明大FWは「フィジカルでは負けない」の心強さを得る。ゴール前に迫った、その直後にFWが縦へ縦へとつなぎ、最後は、ロックの箸本龍雅(3年、東福岡)が強引に突進して早大ディフェンスをこじあけて先制トライ。早大も、すぐさま反撃した。スタンドオフ、岸岡智樹(4年、東海大仰星)のキックから左右に展開。ゴール前のスクラムから右ブラインドをついて岸岡が抜けてトライ。ゴールも決まり同点に追いついた。だが、緊迫の展開はここまでだった。 明大は、早大のキックに対して蹴り返さずにカウンター攻撃に転じた。個々の突破力を生かした力の攻撃である。これで流れは変わった。カウンター攻撃からボールをキープし続け、早大顔負けの速い球出しからのスピードあふれるオープン攻撃で攻める。あわてた早大が反則を犯し、30分、スタンドオフの山沢京平(3年、深谷)がPGを決めて勝ち越しに成功した。 前半が終わって10-7。スコア的には接戦だったが、明大の間断ないアタックは早大にボディーブローに似たダメージを与えていた。 後半は明大の“肉弾ショー”だった。スクラムで優位に立ち続けるとともにFW、バックス一体となった攻撃で早大のディフェンスを切り裂いていく。後半2分、ゴール前に迫り山沢からパスを受けたフッカーでキャプテンの武井日向(4年、国学院栃木)がタックルを跳ね飛ばしてトライ。武井は、日本代表のフッカー、堀江翔太(パナソニック)のように倒れてもすぐに起き上がりプレーに参加する「リロード」能力が高い。将来の日本代表も狙える逸材である。 後半6分にはスクラムでまた早大の反則を誘う。ここでPGを狙わずタッチキックでラインアウトからのフィジカルを生かしたモール攻撃を仕掛けた。スローイングしたフッカーが最後尾に参加してトライするのが理想的といわれるが、ここでもフッカーの武井が押さえて追加点を奪う。