ガソリンも劣化すると聞いたので、劣化前に息子に譲りたいのですが、これにも「贈与税」は発生しますか?
直近の物価高からガソリンをまとめて購入したけれど、劣化することを知って驚いている、という方はいないでしょうか。もし、そういった状況になったとしたら、「劣化前に家族や友人へ、無償でも構わないから譲りたい」と考える方もいるでしょう。 とはいえ、誰かに無償でもお金や物を譲れば贈与税が発生します。そこで、「まとめ買いしたガソリンを劣化前に息子に譲る」という場合において、贈与税が発生するか考えてみます。
贈与税の法的性質
お金や物を無償で受け渡す際に発生する税金があります。それは贈与税です。しかし、私たちが日常生活していく中で、贈与税が発生した、または納税したという話は聞いたことがない、といった方が大多数でしょう。 それもそのはずで、贈与税は贈与により受け取った財産が年間で110万円を超えた場合に発生するからです。この110万円は「基礎控除」と呼ばれる控除で、その額の範囲内であれば贈与税がかからないことになります。 つまり、贈与を受けた財産が110万円以内であれば控除の範囲内で非課税となり、それを超えた部分が一定の税率に従い課税対象となる、という具合です。当然、ガソリンについても1年間で贈与を受けた価格が110万円を超えれば、受け取った方には贈与税が発生します。 仮に、ガソリンを成人の息子に200万円分贈与したと考えてみましょう。この場合、一般贈与財産用の計算式が適用されるので、税率は10%となり、9万9000円の贈与税がかかることになります。 ・贈与価格200万円-基礎控除110万円=90万円(課税部分) ・90万円×10%(税率)=9万9000円(贈与税額)
<図表> 出典:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
現実にガソリンの贈与で贈与税が発生することは考えづらい
ガソリンを子どもに譲る際に贈与税が発生するケースは、現実にはほとんどないでしょう。なぜなら、ガソリンを110万円分も贈与することは並大抵ではないからです。 仮に、ガソリンの価格を1リットル170円であると設定してみましょう。非課税となる110万円分を購入すると、約6470リットルと、膨大な量になります。半分の50万円分であっても、約3235リットルと膨大な量です。これだけのガソリンを購入することも保管することも容易ではないでしょう。 そもそもガソリンは、40リットル以上保管する場合、制限がかかります。具体的には、空地を確保することが求められたり、設備に制限がかかったりして、一般の方はなかなか保管できないようになっています。 そのため、一般家庭に通常保管できる範囲でのガソリンの贈与であれば、贈与税について気にする必要はないでしょう。 なお、ガソリンは保管環境が悪いと、劣化が進み燃焼不良が起こるなど、事故の原因になりかねません。参考までにENEOSは、気温の変化が少ない冷暗所でも半年程度を、保管期間の目安としています。 事件や事故が起こると数百万、場合によっては数千万の被害が出る可能性もあります。半年以上経過し、劣化したと思われるガソリンは使用せず、無償であっても譲らないようにしてください。