キム・ジウォンに沼落ちしたい!「涙の女王」で“世界が恋する女優”に
「愛の不時着」「パラサイト 半地下の家族」といった韓国の映像コンテンツが日本で注目を集め、近年では配信サービスや映画館で韓国ドラマ・韓国映画を観る機会が増えている。作品の面白さはもちろん、俳優の演技力や人となりに魅了された人も多いのではないだろうか。 【画像】キム・ジウォン「私をあがめて」、Netflix「私の解放日誌」場面写真 この連載「今からだって沼落ちしたい!韓国俳優」では、韓国のドラマ・映画が好きなライター・前田かおりが話題作から旬な俳優をピックアップして、その魅力をお届けする。初回を飾るのは「涙の女王」でヒロインを演じたキム・ジウォン。観る者をトリコにする彼女の魅力とは。過去に出演した作品の中から、お薦めの3本もピックアップして紹介する。 文 / 前田かおり 構成 / 小宮駿貴 イラスト / 西村オコ ■ キム・ジウォンとは 2024年もさまざまな作品が話題をさらっている韓国ドラマ。中でも「愛の不時着」の記録を超え、韓国のケーブルテレビ局tvNにて歴代最高の視聴率を達成した「涙の女王」でヒロインを演じたキム・ジウォンの人気はとどまるところを知らない。この大ヒットを受け、自身初のファンミーティングを韓国ほかアジア各国で開催。日本でも東京、大阪でファンミーティングを行い、日本公式ファンクラブ「KIM JIWON JAPAN OFFICIAL FANCLUB」もオープンした。Instagram(@geewonii)のフォロワー数は、8月30日現在までに約1394万人を超えている。そんな最旬スター、キム・ジウォンのこれまでを振り返り、今からだって沼落ちしたくなる彼女の魅力を紹介しよう。 1992年10月19日生まれ、現在31歳のキム・ジウォンは、中学3年生のときに街中でスカウトされたことをきっかけに芸能界入り。2010年にBIGBANGと共演したCMでデビューし、その後、女優活動をスタートさせる。彼女が一躍注目を集めたのは、2013年の「相続者たち」。イ・ミンホ、パク・シネら今やトップスターの面々が若かりし頃に集結した青春群像劇で、ヒロインの恋敵になる超絶ワガママな財閥令嬢役で印象を残す。転機となったのは、2016年に驚異の視聴率41.6%を叩き出した「太陽の末裔 Love Under The Sun」。自分より階級が下の軍人と格差ラブを貫くエリート軍医役を好演し、メインカップルに劣らぬ人気で知名度も一気にアップした。2017年には「サム、マイウェイ~恋の一発逆転!」でパク・ソジュンと共演。同作ではコメディエンヌぶりも発揮し、女優としてのポテンシャルの高さを感じさせた。さらに、2019年には古代史ファンタジー「アスダル年代記」、2020年にはモキュメンタリー風の恋愛ドラマ「都会の男女の恋愛法」、2022年には30代男女の心の焦燥をリアルに描いたヒューマンドラマ「私の解放日誌」に出演し、作品ごとに演技の幅を着実に広げ、華やかなビジュアルにも磨きをかけてきた。 ■ 世界が恋する女優へと躍り出た「涙の女王」 そんなキム・ジウォンが、満を持して挑んだのが「涙の女王」。格差を乗り越えて、財閥3世の令嬢ヘイン(キム・ジウォン)とゴールインした田舎出身の弁護士ヒョヌ(キム・スヒョン)だったが、結婚3年で夫婦仲は冷え切り、財閥一族からの使用人のような扱いにもうんざりしていた。ある夜、意を決して離婚を言い出そうとした矢先、ヘインに難病で余命わずかと告白される。しかも一族の財産を狙う怪しい者たちが登場。思いも寄らぬ危機を前に夫婦の愛が再燃していく。 キム・ジウォンが演じるヘインは、自分のデパートの売り上げしか興味がないというビジネスウーマン。ハイブランドのスーツを戦闘服のように隙なく、そして完璧に着こなす姿は美しい。美しいが、ニコリともせず周囲をフリーズさせる威圧感が半端なく、涙ならぬ“氷の女王”か!?とツッコミたくなるようなキャラクターとして登場する。マジで怖いよ、ヘイン。しかし、冷淡な顔の裏に押し隠している温かな心やヒョヌへの愛が時折のぞく。ロマンス、サスペンス、そしてヒューマンドラマとさまざまな要素を持つ本作で、感情の変化を繊細に表現したキム・ジウォン。韓流スターの中でも圧倒的な演技力を誇るキム・スヒョンを相手に、極上のラブロマンスを演じ切った彼女にとって、まさにこの「涙の女王」は集大成と言える。これからの活躍、次回作が一番気になる女優になったことは間違いない。 ■ キム・ジウォン出演のお薦め韓国ドラマ3選 □ 切ない恋模様でキュンキュンさせて人気爆発「太陽の末裔 Love Under The Sun」 休暇で韓国に戻っていた大尉シジン(ソン・ジュンギ)は偶然出会った女医モヨン(ソン・ヘギョ)と恋に落ちるも、突然の任務で破局に。8カ月後、紛争地域で運命の再会を果たした2人は、命がけの任務を遂行する中、愛を育んでいく。 “ソンソンカップル”と呼ばれた主演の2人、ソン・ジュンギとソン・ヘギョが現実でも世紀のカップルとなったことでも知られる「太陽の末裔 Love Under The Sun」。このメインカップルが繰り広げるラブロマンスに負けず劣らず盛り上がったのが、キム・ジウォン演じるエリート軍医官ミョンジュと、シジンの部下であり親友デヨンとの格差ラブだ。ミョンジュの父は司令官で、娘より階級が下のデヨンとの恋愛は許すことができず猛反対。軍人気質のデヨンは、一度は身を引くものの思い合う気持ちは止められず、人目を忍んでは恋心を燃え上がらせていく。普段は仕事のデキるクールな軍医で素っ気ないミュンジュだが、デヨンの前では甘えモードで恋する女子の顔になる。 「涙の女王」にも言えるが、キム・ジウォンのギャップ演技は絶妙。弾けるような笑顔がたまらなくかわいいだけに、障害の多いデヨンとの恋愛模様が一層切なく感じられ、心を揺さぶられてしまう。寡黙で男気あふれるデヨンを演じたのは、韓国リメイク版「リーガル・ハイ」の主演を務めたチン・グ。本作ではキム・ジウォンとそろって“グウォンカップル”と呼ばれ、2016年のKBS演技大賞でベストカップル賞にも輝いた。 □ 変顔にぶりっ子シーン、本格コメディ演技で新境地「サム、マイウェイ~恋の一発逆転!~」 元テコンドーの有力選手だったドンマン(パク・ソジュン)とアナウンサーになるのが夢だったエラ(キム・ジウォン)は幼馴染み。アラサーの2人は冴えない毎日を送っていたが、エラは勤務先のデパートで館内放送を任されことを機に再びアナウンサーに挑戦。ドンマンは憎きライバルの活躍を見て血が騒ぎ、格闘家の道を踏み出すこととなる。 キム・ジウォン演じるエラは気が強く、思ったことを言わずにはいられない。キャラクター的には「涙の女王」のヘインに通ずる部分もあるが、見た目はとってもカジュアルで庶民派。その垢抜けなさには少々クラっとするが、変顔にぶりっ子シーン、次々と繰り出すコメディ演技など、もはや今は(たぶんこの先もずっと)見られないだけに必見だ。そして、“ロマコメキング”の異名を持つパク・ソジュンとのケミも抜群。ドンマンとエラのじゃれ合いは楽しくて微笑ましいだけに、2人が自分の夢をもう一度追おうと互いに切磋琢磨する姿に胸が熱くなり、互いを意識して恋が芽生えていく展開にはキュンキュンさせられるはずだ。 なお、エラの親友ソリ役には「私の夫と結婚して」でサイテーな裏切り女を演じたソン・ハユン、ドンマンの親友ジュマン役には「マスクガール」「タッカンジョン」のアン・ジェホン、さらに「涙の女王」でヘインの弟を演じたクァク・ドンヨンがエラを裏切る年下男に。そしてパク・ソジュンの盟友チェ・ウシクも出演している。豪華すぎるキャストにもぜひ注目! □ 私をあがめて、生きづらさから抜け出すヒントをくれる「私の解放日誌」 物語の主人公は長女ギジョン(イ・エル)、長男チャンヒ(イ・ミンギ)、次女ミジョン(キム・ジウォン)という30代の3兄妹。ソウル郊外の田舎町から職場まで通う彼らは、人生に満たされないものを感じながらどうにもできない自分に苛立っていた。そんな彼らの前に、実家の仕事を手伝う男ク(ソン・ソック)が現れたことから何かが変わり始める。 とにかく驚くのは、キム・ジウォンのリアルな演技だ。本作で演じるミジョンは自我の強い長女や長男と違って、親の前でも無口で表情も暗い。契約社員の彼女は正社員の同僚たちと職場で馴染めず、パワハラ上司からはいびられる毎日。キム・ジウォンはどこにも居場所がなく、窮屈な思いを感じているミジョンの無力感を淡々とした演技の中ににじませる。そんなミジョンは、クに「私をあがめて」と強烈なひと言を放つ。謎めいた男クを演じるソン・ソックが危険でセクシーな魅力を発しているだけに、ミジョンとの間がどうなるのかドキドキせずにはいられない。 本作の脚本を手がけたのは「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」のパク・ヘヨン。序盤は陰鬱なムードで淡々と物語が進むので挫折しそうだが、ミジョンのあの発言からクとの関係や兄姉パートのドラマがグイグイと物語に引き込んでいく。随所に心に沁みる名ゼリフがちりばめられており、共感を誘う。観終わったあとはまさに心が解放された気分に。生きづらさを感じたときに見ると、抜け出すヒントをくれそうな上質なドラマだ。 □ 前田かおり(マエダカオリ)プロフィール ライター。映画やドラマのレビュー、キャスト・スタッフへのインタビューを多数手がける。キネマ旬報ムック「韓国テレビドラマコレクション」や韓国映画「密輸 1970」「ボストン1947」の劇場用パンフレットほか、情報誌、Webで各種エンタテインメント情報を紹介。2024年上半期のベスト3はドラマ「殺し屋たちの店」「ヒーローではないけれど」、映画「密輸 1970」。 「太陽の末裔 Love Under The Sun」コンプリート・シンプルBOX1&2 Blu-ray-BOX:各6600円(税込) / DVD-BOX:各5500円(税込) 発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント 「サム、マイウェイ~恋の一発逆転!~」コンプリート・シンプルBOX1&2 Blu-ray-BOX:各6600円(税込) 発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント