KONOSUKE TAKESHITAの現在地――1万字インタビュー「クリス・ジェリコに勝つという十字架を背負って歩んでいく覚悟はできています」(前編)
AEW初登場時、試合直前にジェリコから言われたこと
DDT26年の歴史の中でも最大級のドリームマッチが11・12両国国技館でおこなわれる。KONOSUKE TAKESHITAはAEWではなくDDTのリングでクリス・ジェリコとの一騎打ちを実現させることを野望として抱いてきた。その背景にはいくつもの物語とTAKESHITA自身の思いが刻まれていた。育み続けたその熱量を言葉にし放出した上で、決戦に臨む――。(聞き手・鈴木健.txt) 【写真】2021年、D王GP優勝した竹下に小橋さんがトロフィー贈呈
――9・24後楽園のリング上で、クリス・ジェリコとの一騎打ちが発表された時の観客のリアクションは、どんな味わいでしたか。 TAKESHITA まず、ジェリコとシングルでやりたいっていうのは、AEW所属になった時点で思っていたことで。それをAEWのリングでやるというのは自分自身も想像できるところまで来ていましたけど、そこはDDTのリングでかなえたいという気持ちがあったんです。過去にDDTではWWEスーパースターのパロディーのようなことをやってきましたけど、旗揚げ当初のことを思えばモノマネではなく現役バリバリのスーパースターが上がるなど考えられなかったことですから、それを現実のものにするのが僕の中での密かな野望だったんです。それがかなうというところの達成感はありましたし、お客さんの中にあるTAKESHITAと誰だったら実現するだろうという想像を遥かに超えたかった。だからあの時のリアクションを感じた時は、素直によかったって思いました。 ――あの空間での瞬間最大風速数は、2008年末の後楽園ホールで翌年の両国国技館初進出を発表した時に匹敵するものがありました。 TAKESHITA あのインパクトは、僕もサムライTV視聴者として伝わってくるものがありました。すごいことをやるんだって思いましたけど、そのあとも両国国技館を毎年やって、日本武道館、さいたまスーパーアリーナってステップアップしていく中、驚きのハードルが上がっていってインフレを起こして、それ以上の驚きとなるとクリス・ジェリコがDDTに来るというぐらいしかないだろうということですよね。そこに1年かけてたどりついた感じです。僕としては長い1年でしたけど。 ――この1年は長く感じていたんですね。 TAKESHITA こっちの1年はすごく長かったです。月日が経つのは早いんですけど、AEWってその日の出番があるかどうかわからない状態で毎週会場にいかなければならなくて、最低でも12、13時間は会場で監禁状態になる。そこで試合があったら何ができるか、あるいは試合はなくても出番が来たら何ができるかを考えなければならない。だから体感としてはすごく長い。その中のひとつとして、ジェリコと接触しておくという自分の中のミッションがあったわけです。それを所属になった時からやっていっての1年ですから。では、そもそもなぜジェリコなのかをお話しましょう。まだAEW所属になる前、DDTからアメリカに渡った去年の4月、そこから約4ヵ月武者修行の形でいたんですけど、その4ヵ月をやりきったなー、でも…これは日本にファンに届いているものなのだろうか。アメリカでは認知してもらえたけれど、それがDDTに還元できているのかを考えて不安になった時があったんです。そのタイミングでジェリコが、僕のことを“Future world champion”とツイートしてくれたことがあって、それを見た時に僕のプロレス人生11年の中で一番キツかった4ヵ月が報われた気がしたんです。同時に、そう言ってくれるのであれば何かジェリコとできることがあるんじゃないか、まだ誰もやったことがない…ジェリコが世界的スーパースターになってからも何度か日本に来ていて、常に超スペシャルゲスト的なポジションでしたよね。今の僕なら、対等に闘えるんじゃないかと。超大物vsDDT期待の竹下幸之介ではなく、リングの上であれば本当の意味でイーブンにやり合えると思ったんです。それはアメリカで実現してももちろん話題になることだけど、DDTでできることっていうのが、こうやってアメリカに送り出してくれたDDTへの恩返しになる。そういうことがあって、クリス・ジェリコをDDTに呼びたいという気持ちが固まりましたね。 ――ツイートを見た時、ジェリコの中に自分の存在が入っていることを確信できたのは大きかったでしょうね。 TAKESHITA 去年、そういう形でAEWに参戦させてもらいましたけど、2年前にも1週間だけアメリカにいって、AEW Darkで2試合したんです。その時の本当に初めての試合(2021年4月7日、ダニー・ライムライト戦) で入場直前、たまたまバックステージにいたジェリコが「おまえは日本人か?」って話しかけてきたんです。まだ英語を話せなかったから中澤マイケルさんがついてくれていたんですけど「DDTという団体から来たタケシタっていう選手です」って伝えたら、身長がいくつかとか聞かれたあとに「そうか。これから日本のプロレスはおまえが盛り上げていかないといけないな」という感じで。それで「よし、今からおまえの試合を見ておくよ」って言われたんです。 ――AEWファーストマッチの直前に、ジェリコに見られるという事態になると。 TAKESHITA それは嬉しいなと思いながらリングに上がって、試合が終わってバックステージに戻ってきたらここがよかった、でもここが足りないってすぐにフィードバックしてくれて。本当に見てくれたんだ!ってなりましたよね。リング上からも見ている姿はわかったんですけど、自分はすごいところに来たんだなって思いながら無観客の中でやったんです。やっぱり僕は2000年代のWWEを見て育った人間なので、そこへのリスペクト心がすごくあって…いやあ嬉しかったですよね。今でこそプロレスラーになっていますけど、その時ばかりはファン心になりました。