専門店「ヨシハラ商会」年度内に駅前移転 福島県喜多方市巡りに自転車を 滞在型観光目指す
福島県喜多方市のJR喜多方駅前に、大正時代の土蔵を改装した2次交通拠点が誕生する。市内の自転車専門店「ヨシハラ商会」が年度内に移転して、観光客や市民が自転車で市内を気軽に巡る環境を整える。ラーメンの街として知られる喜多方は来訪者に長時間過ごしてもらう仕掛けづくりが課題になっており、自転車を軸にした滞在型観光地の実現を目指す。 喜多方市はコロナ禍前には年間180万人以上が訪れ、インバウンド(訪日客)も目立つようになっている。ただ、喜多方駅から蔵を生かした街並みが広がる市中心部までは1キロ程度離れており、ヨシハラ商会代表の高橋真志さん(47)は、市内を訪れる観光客の15%ほどを占める鉄道利用者の利便性を高めようと、駅前への移転を決めた。 新たな店舗では、電動アシスト付き自転車などを貸し出す。自転車を動力にした「ベロタクシー」も運行し、喜多方観光コンシェルジュが監修したコースを巡る。喜多方駅前から観光客が集中する市役所周辺と国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている小田付地区、レトロ横丁商店街の3カ所を拠点に巡るルートを計画しており、市内のベロタクシー会津きたかたと協働で来年3月ごろからの運行を目指す。
通勤・通学者を対象とした自転車のサブスクリプション(定額利用)を始め、自転車を利用しやすい環境もつくる。店舗にはカフェを併設し、地元の農産物や会津のあんこなどを使った軽食を提供する。駅前のにぎわいづくりや市民と観光客の交流促進にもつなげるつもりだ。喜多方駅は大川喜多方サイクリングロードに近く、自転車を袋に入れて鉄道などで運ぶ「輪行」によるサイクルツーリズム層にもアピールする。 自転車をめぐっては、通信販売での購入者が増え、会津地方でも取扱店の閉店や縮小が進んでいる。メンテナンスや修理が欠かせないが、店舗が減ると利用環境が悪化しかねない。高橋さんは「自転車を利用する人の環境を維持するとともに、観光の選択肢を広げる一つのツールとして、自転車で喜多方の魅力を発信していきたい」と意気込む。