村上春樹「西部劇「ローハイド」は、小学生でしたがよく観ていました」若い頃のクリント・イーストウッドを語る
作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。6月30日(日)の放送は「村上RADIO~歌う映画スターたち~」をオンエア。村上春樹さんが持っている秘蔵の音源の中から「えっ!? こんな人も歌っているの?」と少し驚いてしてしまうような楽曲を放送しました。 この記事では、後半2曲について語ったパートを紹介します。
◆Anthony Perkins「Just Friends」
アンソニー・パーキンス、日本でも人気がありました。1960年代、若い女の子たちはみんな「トニパキ」に夢中でした。ハンサムで清潔で、育ちが良さそうで、すらりとした長身で、アイヴィースタイルがよく似合ってね。彼の出た映画の中ではヒッチコックの『サイコ』が圧倒的に有名ですが、他にはあまり作品に恵まれなかったみたいです。ハリウッドの映画界にうまく馴染めず、ヨーロッパに住んでヨーロッパの映画に出ていたんだけど、もうひとつうまくいかなかったみたいです。僕は『さよならをもう一度』で、イングリッド・バーグマンが扮(ふん)する年上の女性に憧れる孤独な青年を演じた彼が、個人的に好きでしたが。 彼はジャズが大好きで、歌もうまく、何枚かアルバムを残しています。今日はその中から『ジャスト・フレンズ』を聴いてください。
◆Clint Eastwood「San Antonio Rose」
若い頃のクリント・イーストウッドは売れない俳優だったんですが、1950年代の終わりのころにテレビの西部劇「ローハイド」の準主役に抜擢され、一躍人気者になります。この番組、日本でも人気がありました。僕も小学生だったけど、よく観ていました。そしてその人気に乗っかって彼は、1963年に「ローハイドのクリント・イーストウッド、カウボーイ・ソングを歌う」というアルバムを出します。イタリアに行ってマカロニ・ウェスタンで成功を収める前のことです。 イーストウッド自身はチャーリー・パーカーの伝記映画を作るくらいの熱心なジャス・ファンなんですが、ここでは「ま、いいか」みたいな感じで気楽にウェスタン音楽を歌っています。うまいか? うーん、「悪くない」というあたりじゃないですかね。 聴いてください。クリント・イーストウッドが歌います、「サン・アントニオ・ローズ」。 (TOKYO FM「村上RADIO~歌う映画スターたち~」2024年6月30日(日)放送より)