「ありがとう」の言葉はまず同僚から…社員間で感謝伝えるカード 企業でじわり やる気引き出し潤滑油に
社員が互いに感謝の言葉をカードに書いて伝える取り組みが、広島県内の中小企業でじわりと広がっている。社員のやる気を引き出すだけでなく、温かな言葉が人間関係の潤滑油になる効果も生まれている。働きやすい職場づくりや離職の防止にもつながっている。 【写真】JRバス中国のグッドジョブカード 工業用模型製造のアイ・エム・シーユナイテッド(広島市安佐北区)は、約10年前から「ハピネスチャージメモ」に取り組んでいる。従業員約40人が「幸せに感じたこと」を名前や所属部署などを添えて専用紙に書き込み、職場の箱に入れる。パソコンやチャットでも寄せられ、多い月は30枚ほど集まる。 出産や結婚など個人的な報告もあるが、「荷物を持っていたらドアを開けてくれた」「落ち込んでいたら声をかけてくれた」など同僚へのお礼も。育児休暇を取った従業員が「おかげで子どもとたくさん触れ合えた」と仲間に感謝するメッセージもある。家族を介護する人が、同僚の助言をありがたく思う気持ちもつづられている。 メモは月ごとにまとめて食堂の入り口近くに貼り出し、社員の投票で大賞も選ぶ。今津正彦社長は「感謝されて気分が悪くなる人はいない。同僚の優しさやプライベートの意外な一面を知ることができ、人間関係で悩んで辞める社員は少ない」と手応えを感じる。 JRバス中国(西区)は社員の良い点を挙げる「グッドジョブカード」の活動を続けている。社員の意欲を高めてサービス向上につなげようと2012年に始めた。当初は管理職が部下に送っていたが、22年から社員同士に拡大。23年度は約1200枚が書かれた。 「渋滞解消のため関係箇所へ迅速に対応してくれた」「講習室の掃除を手伝ってくれた」など内容は多種多様だ。運転手が運行管理者に感謝したり、管理職の目の届きにくい貢献をたたえたりしている。全員が年1枚以上書くのが目標だ。同社は「同僚の仕事ぶりに目を向けるきっかけになる」と説明する。 人材コンサルティングのひろぎんヒューマンリソース(南区)によると、人手不足の中、社内の雰囲気づくりのために同様の取り組みに興味を持つ企業は多いという。コンサルティング事業部の木村充秀担当部長は「同僚の異変などに気づきやすくなり、メンタルヘルスの不調や離職の防止にも役立つのではないか」と効用を指摘する。
中国新聞社