<芽生えの春・有田工センバツへ>第2部/2 マネジャー 地道な努力、強い意志 /佐賀
「試合の時の選手はかっこいい。私たちの期待に応えてくれるからすごい」。有田工野球部マネジャーの藤田明香里さん(2年)はセンバツ初出場を決めた選手に敬意を払う。マネジャーは藤田さんと1年生の古川星羅さん、山崎真緒さんの3人。セラミック科、電気科、デザイン科と学科は違うが「毎日一緒にいるので家族みたい」と仲が良い。 仕事は多岐に渡る。スコア付けやアナウンス、ノックの球出し、補食のおにぎり作り、部員のユニホームの洗濯や食器洗いなど数え切れない。野球部で唯一、遠方の佐賀市から通学する山崎さんは土日や夏休みは午前5時台の始発に乗り、約1時間かけて登校する。中学2年の時に学校の先輩の試合を観戦してから野球が好きになり、野球部のマネジャーとファッションデザイナーになる夢を両立できる有田工に進んだ。 梅崎信司監督(42)は「忙しい時は本当に大変だと思う。マネジャーは強い意志がないと続けられない」と3人をねぎらいながらも、藤田さんが5月中旬に仮入部した時には厳しく接した。当時入っていた部活を楽しむことができず、友達と廊下で勉強をして時間を持て余していた。そんな時、野球部マネジャーだった池田旭さん(3年)に「野球部に入らないか」と声をかけられた。最初は断ったが何度も勧誘され、友達と一緒に仮入部してみた。 仮入部の1カ月間は整列やミーティングの時にグラウンド内に入れなかったが、夏の県大会前の朝練も毎日午前5時にグラウンドに通った。一緒に仮入部した友達が辞めて1人になった時は先輩たちが励ましてくれた。食器を洗っていた時、1年生部員が担当するベース洗いをしていた上原風雅主将(2年)と山口洸生選手(同)が「明香里ちゃんはどうして野球部に入ったの」と声をかけてくれた。それから次第に藤田さんの周りに人が集まるようになった。先輩や同級生の支えもあって入部が認められ、今はチームに欠かせない存在だ。 1年生の古川さんはセンバツ出場の発表を待っていた1月28日、緊張感から校内の会議室で貧血になった。でも「発表の瞬間に絶対に立ち会いたい」と会場へ戻り、選手と喜びを分かち合った。古川さんは「選手がささいなことでも『ありがとう』や作ったおにぎりを『いただきます』『おいしい』と言ってくれるから頑張れる」と語る。3人の地道な努力が有田工のセンバツ初出場を陰ながら支えた。【井土映美】