【金投資】金利上昇局面で収益を生まないゴールドの魅力は薄れる それでも最高値を更新する“不思議な現象”はなぜ起きたのか
不動産コンサルタントの長嶋修氏は、これから訪れるであろう社会の大変革や金融リセットなどを総称して、「グレートリセット」と名付けているが、来るグレートリセット後の不透明で不確実な社会に、私たちはどう対応し、生きていけばよいのか。不動産コンサルタント・長嶋修氏の新刊『グレートリセット後の世界をどう生きるか』(小学館新書)から、金(ゴールド)価格の動向と投資について考察する。 【写真】『グレートリセット後の世界をどう生きるか』の著者・長嶋修氏
* * * この大激動期にあって、現金や株式、不動産やゴールド、仮想通貨など多様な資産がある中で、自身の資産を増やすため、あるいは守るために、具体的にどこに、どのような投資をしておけばよいでしょうか。 ここ2~3年程度の金融市場は原則的に、過去20年程度の延長線上にあります。リーマン・ショック前のプチバブルとその崩壊、そしてそれをリカバーする世界的な大規模金融緩和、そして2020年コロナショック後の天文学的な金融緩和の中で、円やドル、ユーロといった通貨の価値が希薄化し価値を毀損させると同時に、株や不動産などの資産が大きく価値を持つといった流れです。 「金融リセット」が起こるまでの数年は引き続き、ますます通貨の価値が下がる、換言すると資産の価値が上がる、といったことが続きそうです。この時、現時点では大幅な円安圏にある為替が円高に反転するようなことがあった場合、1990年型のバブルが発生する可能性があります。 ここでは、ゴールドへの投資について考えてみましょう。
金利上昇下での最高値更新の意味
ゴールドはこのところ過去最高値を更新し続けていますが、実はこれはちょっと不思議なケースです。というのも、主要国の金利が上昇すると、収益を生まないゴールドの魅力は相対的に薄れるためです。 ゴールドはあくまで「有事の金」とされ、例えばハイパーインフレに見舞われるとか国家財政破綻するとか、経済金融市場の異常事態に備えるといった位置づけのものです。これが上昇し続けているということはもちろん「有史以来最大の金融緩和の影響」と、もしかすると「そこはかとない現行金融システムへの不安」を示しているのかもしれません。 いずれにせよ日本だけがバブル化する場合、他主要国の不安はぬぐえないわけですからゴールドは選好されがちとなり、ここから大きく下がることは考えにくいと思います。ただ、明らかに儲かる(と思える)日本株や不動産と比べると、相対的な魅力は薄れるように見えるかもしれません。 金融システム不安のピーク時には大きく上昇する可能性もあるでしょう。いずれにしてもゴールドはあくまで「有事」のものですから、そんなに多く抱えるものではなく、せいぜい全資産の5~10%でいいのではないでしょうか。 私は「金貨」をそこそこ持っています。その理由はたんに「美しいから」と、もうひとつは社会システムが一時的にでもストップし、流通システムが滞った際に、金貨と水や食料が交換できるといった万一の可能性を考慮してのことです。金の延べ棒では、水や食料と交換するには過大でしょう。 なおゴールドそのものの市場価格に連動して値動きをする「金ETF」は、保有していません。なぜなら「手元にないと困るから」です。現物と交換可能としているETFでも、社会的混乱・混沌の中で手続きに時間がかかったりすれば、自分が求める機能とは相いれないからです。 ※長嶋修・著『グレートリセット後の世界をどう生きるか』(小学館新書)より、一部抜粋して再構成 【プロフィール】 長嶋修(ながしま・おさむ)/1967年東京都生まれ。不動産コンサルタント。さくら事務所会長。NPO法人日本ホームインスペクターズ協会初代理事長。国交省・経産省の様々な委員を歴任。YouTubeチャンネル『長嶋修の日本と世界の未来を読む』では不動産だけではなく、国内外の政治、経済、金融、歴史などについても解説。広範な知識と深い洞察に基づいた的確な見立てが注目を集めている。マスコミ掲載やテレビ出演、講演等実績多数。著作に『不動産格差』(日経新聞出版)、『バブル再び~日経平均株価が4万円を超える日』(小学館新書)など。最新刊は『グレートリセット後の世界をどう生きるか~激変する金融、不動産市場』(小学館新書)。