花蓮地震めぐる中国との世論戦は「台湾に軍配」ウォッチャーが解説
そうなると、日本を含む海外メディアが被災地から発信する量が増える。ニュースの内容も濃くなる。そして、それを日本のラジオのリスナーや、テレビの視聴者、新聞を手にした人が見たり、聴いたりする。さらに震災への関心が高まり、台湾の被災者への同情を寄せる。 実際、地震発生直後から、日本国内では「今こそ、台湾に恩返しをする時だ」という声が上がった。元日に起きた能登半島地震では、台湾からたくさんの義援金が寄せられ、わざわざ台湾から炊き出しに来てくれる人もいたからだ。 ■築かれた交流の延長で連携、連鎖を生む 誤解のないように聞いてほしいのだが、今回の地震での犠牲者や被害は、海外で起きた災害としては、過去に日本のメディアが伝えたものに比べても特段、甚大ではない。だが、日本では連日、報道されてきた。さきほど説明したように「距離的な近さ」、それに「社会システムやお互いの感情の近さ」。メディアの特性だろう。そうなると、報道はやはり好意的なトーンになる。 現地に入った海外メディアは、被災者が滞在する体育館に、個室式テントが用意されたり、食料が十分に提供されたりしていることなどを伝え、当局の迅速な対応を評価する報道も多い。 さかのぼれば、2011年の東日本大震災では台湾から200億円以上の義援金が寄せられた。そのほとんどが個人を含めた民間からの義援金だった。新型コロナウイルスが日本で蔓延し始めた当初、台湾からは日本で不足していたマスクが贈られ、のちには台湾で足りなくなったワクチンが日本から台湾へ寄贈された。 多くの死傷者や、多大な被害が出た今回の地震は不幸なことだ。ただ、メディアの報道の話から始めたが、この地震によって、日本と台湾の間で、良好な連携、連鎖を生むことにつながっている。それも、これまで築かれた交流の延長にある。 ■日本国内で報じられる中国の動き 話を変えよう。日本では、台湾での震災に対する関心が高いだけに、現場からのリポートだけでなく、さまざまな地震関連のニュースが日本で報道される。日本国内で広がる台湾への支援の動きはもちろんのこと、中国サイドの動きも伝えられている。