「裸になるときの度胸がいい」…「性転換した」ストリッパ―が大絶賛!ストリップ界の頂点が放つ「心を掴む」魅力
1960年代ストリップの世界で頂点に君臨した女性がいた。やさしさと厳しさを兼ねそろえ、どこか不幸さを感じさせながらも昭和の男社会を狂気的に魅了した伝説のストリッパー、“一条さゆり”。しかし栄華を極めたあと、生活保護を受けるに至る。そんな人生を歩んだ彼女を人気漫才師中田カウス・ボタンのカウスが「今あるのは彼女のおかげ」とまで慕うのはいったいなぜか。 【漫画】床上手な江戸・吉原の遊女たち…精力増強のために食べていた「意外なモノ」 「一条さゆり」という昭和が生んだ伝説の踊り子の生き様を記録した『踊る菩薩』(小倉孝保著)から、彼女の生涯と昭和の日本社会の“変化”を紐解いていく。 『踊る菩薩』連載第17回 『服を脱いで放心状態…「風俗の裏側」を探りつづけた男がみた伝説のストリッパー・一条さゆりの「意外な」本音』より続く
後輩ダンサーが当時を振り返る
一条と同じプロダクションに所属し、その舞台を間近で見ていたダンサーに、ジュリアン・ジュリーがいる。10代で性転換手術をして、セックス・チェンジダンサーとして人気を誇った「女性」だ。 私は以前、一条について聞こうとジュリアンを自宅(大阪市城東区)に訪ねている。 部屋はきれいに整理され、あちこちで熱帯魚が飼われていた。寒い日だった。ジュリアンは黒いロングスカートをはいて、長い足をこたつに入れていた。 「若いころは、絶対にこたつに入らなかったですよ。足が太くなるから踊り子はこたつに入りません。でも、最近はもういいわっと思ってね」 語り口は女性そのものだ。
服を脱げば「花」が咲く
「私が出会ったとき、一条のお姉さんは関西ストリップ界の頂点にいました。この世界にはお姉さんより綺麗な人は大勢いたんですがね。お姉さんはどちらかといえば、イモねえちゃんでした。踊り子のなかには、おしゃれなボーイフレンドに車で劇場まで送ってもらう子もいたんですが、お姉さんはスッピンでエプロンをして劇場まで歩いてくるような人でした。最初、一条さゆりを知らないとき、『このおばさん、何しに来たんかな』と思ったほどです」 一条はスポットライトを浴びる派手な世界に身を置きながら、庶民的な感覚を持ち続けた。ジュリアンはいっとき、一条の近くのマンションに住んでいた。ある日、朝遅くまで寝ていると、こんこんと玄関のドアをたたく音がする。しばらくしてベッドから抜け出たジュリアンが玄関を開けると、冷たいイチゴが置いてあった。 「きれいに洗って持ってきてくれたんです。そういう気遣いをする人でした」 普段、一条は庶民性をまといながら、舞台では誰にも真似できないほど花のある芸を見せた。そのギャップが男の心を揺さぶった。 「姉さんと一緒に舞台にも出ました。そりゃ、人気が普通じゃない。すごいんです。一条さゆりが出るとなると、朝から劇場前に客が並んでいる。姉さんが和服を着て、『緋牡丹お竜』なんか踊るでしょう。モッサイ(イモ臭い)感じがするんです。でも、パッと裸になるときの度胸がいい。一瞬にして花が咲くようで、同じ踊り子として悔しいほどでした」 『「その色気に思わず吐息がもれてくる」…ストリップ界の「看板」一条さゆりがはまった「ロウソクの恍惚』へ続く
小倉 孝保(ノンフィクション作家)