村上春樹の世界を表す、新しい演劇表現を目指して 那須凜が挑む日英合作『品川猿の告白』
日本初演のあとはグラスゴーへ。
――村上文学のファンの方々も、期待を込めてこの舞台を注視しているのではないでしょうか。 きっとそうですよね。「村上春樹作品の大ファンの人たちのことを“ハルキスト”と呼ぶんですよ」とマシューさんたちに教えたら、それは知らなかったと言っていました(笑)。実はグラスゴーでのワークショップで、マシューさんが「上演出来ないかもしれない」と言うくらい、行き詰まった時があったんですよ。原作をリスペクトしながらも、舞台を面白くするためにこんなふうに改訂していいのだろうかと、すごく葛藤していたんですね。でも最後にはマシュー自身が「原作に最大限のリスペクトを持つ、それは当然のこととして、ここから原作に立ち戻ることはやめよう。僕たちの『品川猿の告白』を作ることにシフトしましょう」と心を決めたので、私たちも覚悟を決めて動き出しました。批判や不満は出て来るだろうと思いますけど、それよりも「村上春樹の世界を表す、こんな新しい演劇表現があるんだ!」と感じていただける割合の方が絶対に多いと思うので、それを信じて突き進みたいと思います。 ――日本初演の後は、グラスゴーでも上演が予定されていますね。 はい。そのトラムウェイという劇場は名前の通り、かつて電車の修理などをする倉庫だったらしく、とても素敵な劇場です。皆が羨ましがるだろうなと思いますね(笑)。 ――俳優の先輩でもあるお母様(那須佐代子)も、羨ましく思っていらっしゃるのでは? メチャメチャ羨ましがっていて、「ちょっと待って! 来年の2月末から3月でしょ。行けるかな~、行ったらアパートメントに泊めてくれる?」って言うので「もちろん!」と(笑)。この日本初演からスタートして、評判が広まっていって、いろんな国に持っていけたら最高だなと思っていますね。頑張ります! 取材・文:上野紀子 撮影:興梠真帆 <公演内容> 日英国際共同制作 KAAT × Vanishing Point 『品川猿の告白 Confessions of a Shinagawa Monkey』 原作:村上春樹(短編「品川猿」「品川猿の告白」より) 原案・構成・演出:マシュー・レントン 演出協力:サンディ・グライアソン 脚色:サンディ・グライアソン、マシュー・レントン 翻訳・ドラマトゥルク:阿部のぞみ 出演: 那須凜 サンディ・グライアソン 伊達暁 エリシア・ダリ 田中佑弥 サム・ストップフォード 家納ジュンコ アイシャ・グッドマン エイリー・コーエン(人形遣い) 【アンダースタディー】北川雅 2024年11月29日(金)~2024年12月8日(日) ※11月28日(木) プレビュー公演 会場:神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ <ツアー情報> 【スコットランド グラスゴー公演】 2025年2月22日(土)~3月1日(土) Tramway 【スコットランド ダンディー公演】 2025年3月6日(木)~3月8日(土) Dundee Rep