物価高・移民で崩れた寛容…極右政党1位のフランスがEU揺るがす(2)
◆「議会状況さらに悪化…大統領の権力制限を図るはず」 極右勢力の拡大を防ぐために早期総選挙カードを取り出したマクロン大統領の勝負がむしろ極右が早期に権力の中心に入る失敗を招く手法になったという指摘も出ている。年金改革など各種「マクロン改革」を強引に進めて恨みを買ったうえ、独断的な早期総選挙決定で油を注ぐ格好になったという説明だ。 FTは「多くの有権者はエリート主義的なマクロン政権を拒否し、伝統的な反移民の立場に加え、生活費と賃金問題を強調するRNを好むようになった」と診断した。 ニューヨークタイムズ(NYT)は「マクロン大統領は2022年の総選挙以降、安定した連合政府を構成できず、議題を達成する試みに挫折感を感じたが、今の状況ははるかに悪いようだ」とし「フランス大統領は外交・軍事政策に広範囲な統制権を行使してきたが、RNが絶対多数を得れば大統領の権力制限を図るはずだ」と予想した。 RNが過半議席を達成するかどうかも関心事だ。RNのジョルダン・バルデラ代表は「過半を達成できなければ首相を引き受けない」と公言していた。ロイター通信は「極右、中道、左派のうちどのグループも単独で統治したり連立交渉をしたりするほど議席数が多くなければ政治がまひするだろう」と懸念した。 ◆RNの国政参加、西側欧州全般に亀裂のおそれ こうした中、RNがフランス企業を優先する法律を制定しようとするが、これはEU単一市場規定違反だと、英日刊ガーディアンは伝えた。フランス議会は国家予算を統制していて、RNがフランスのウクライナ支援を縮小する可能性も提起される。 RNの勝利が年内の選挙が予定されているドイツ東部やオーストリアなどでEUに懐疑的な他の極右政党の勢力拡大に影響を及ぼす可能性もある。ポリティコはRNがEUと北大西洋条約機構(NATO)に懐疑的だとし、同政党の勝利が西側の同盟を分裂させる可能性があるとみている。 一方、この日、ユーロは小幅値上がりした。これに先立ち市場ではRNが執権すれば財政赤字が浮き彫りになり変動性が拡大するという懸念からユーロが値下がりしたが、1次投票の結果、RNが2次投票で過半を確保するかは未知数という見方が出ているという分析だ。ブルームバーグ通信は専門家らを引用し、「ルペン氏を阻止するために中道と左派連合が(候補辞退などで)形成する同盟が信頼を受け始めればフランス市場は回復する可能性が高い」と伝えた。