飲食店の座席からスマホで注文 静岡県内導入進む 前年比2.5倍増
静岡県内の飲食店で、来店客が自らのスマートフォンで料理や飲み物を注文するモバイルオーダーシステムの導入が進んでいる。従業員が注文を受ける仕事を省き、他の業務に集中できるようにする効率化が目的。新型コロナウイルス感染症の5類移行後に来店客数が回復する一方、慢性化する従業員の人手不足に対応しようと選ばれている。 浜松市中央区の中心街で営業する居酒屋「遠州浜松郷土料理 黒フネ」は昨年12月、客がテーブルの上のQRコードを読み取って画面に表示された料理を注文するサービスを始めた。アプリをダウンロードする必要はなく、クレジットカードなどで支払いを済ませることもできる。満席時(約70人)に8~9人は必要だった従業員が、5人で対応できるようになった。 同店を経営する杉原勇樹さん(45)は「本来は接客を大事にしたいが、人材確保だけでなく育成にも時間がかかっていた。アルバイトがメニューを覚える必要がなくなり、すぐに仕事ができるようになった」と話す。 サービス導入は注文回数の増加にもつながり、昨年12月の客単価は前年同月比で300円ほど増えた。同店でモバイルオーダーを利用した男性客(46)は「スタッフを呼ぶ必要がなく、ストレスなく注文できる」と話した。 モバイルオーダーシステムサービスなどの「Air(エア)レジオーダー」や飲食店情報サイトを手がけるリクルート(東京都)によると、同社サービスを導入した1月末時点の県内飲食店数は前年から2・5倍に増加。浜松市内では3・4倍に増えた。大手企業の支社や支店が多い県内では、各社が制限していた宴会を再開し始めた昨年10月ごろから飲食店の人手不足が深刻化し、問い合わせが増加したという。 同社の担当者は「求人を出しても働き手が集まらず、予約を制限する店舗もありニーズは増している。今では当たり前になったネット予約と同じように、モバイルオーダーを普及させていく」と見据える。
静岡新聞社