「目に心においしい」「いつまでも青春できると思える作品」映画ファンはWEB映画『ミライヘキミト。』をどう観た?
『うみべの女の子』(21)のウエダアツシ監督が、川島鈴遥、平祐奈、西田尚美、浅田美代子の4人をヒロインに迎え、異なる世代の青春とおいしいごはんを映しだす、マイナビ創業50周年を記念するWEB映画『ミライヘキミト。』。本作は作品公式YouTubeチャンネルにて8月16日(金)より配信されるが、それに先立ち完成披露試写会が開催。ひと足先に本作を鑑賞した映画ファンからは「家族の温かみを感じました」(50代・女性)、「いつまでも青春できると思える作品」(30代・女性)、「みんなで朝食を食べたくなる」(30代・男性)など、家族や青春、食に関する絶賛コメントがたくさん届いた。本作はいったいどんな作品なのか?試写会参加者の感想と共に、本作の魅力をひも解いていく。 【写真を見る】思わずよだれが垂れてしまいそう…。釜揚げシラス丼のレシピも知りたい! 海辺の小さな町に住む渡利家では、毎朝、母の羽菜(西田)、長女の咲季(平)、次女の由宇(川島)、祖母の海(浅田)が手分けし、充実の朝ご飯を準備する。その匂いに誘われ、父の俊夫(斉藤陽一郎)が起きてくるのが日常の風景だ。仲睦まじい一家だが、実は家族に言えない“秘密”を抱えている者もいる。鮮烈な長編映画初監督作『リュウグウノツカイ』(14)を皮切りに、『桜ノ雨』(16)、『うみべの女の子』など様々な青春のきらめきを映しだしてきたウエダ監督。本作はサミュエル・ウルマンの名詩「青春の詩」からインスパイアされた自身のオリジナル脚本となり、4話に分けて配信される。 ■様々なライフステージで奮闘するヒロインたちに自分を重ねて共感! 第1話は川島演じる次女、由宇の物語。幼少期は女子ながらも少年野球でエースとして活躍していた由宇は、高校で野球部のマネージャーを務めている。そんな彼女が進路に悩み、恋人である野球部のエース水本晃介(福松凜)と家出を試みる。令和の時代感を盛り込んだ等身大の青春ストーリーに、観客も「学生が進路に悩む姿が現実的で、自分の時と重なった」(20代・女性)、「自分も野球大好き人間なので、主人公と気持ちが重なった」(40代・女性)、「ちょうど高3の子がいるので、悩んでいるんだろうな。野球が大好きで野球のシーンの真剣さが悩んでいることを表している気がして感動した」(50代・女性)と大人の世代は自身の学生時代に想いを馳せたり、親になったいま、進路の問題に直面している自身の子どもと由宇を重ね合わせたりして非常に共感できたよう。 夢へと邁進していく由宇については「自分のやりたいことをその想いのまま持続することの難しさと同時に、描く成果があるのであれば努力が必要だと思った」(20代・女性)、「せつない表情がとてもよかった」(40代・女性)という洞察や「まだまだ夢いっぱい、野球の情熱を忘れず女性監督になってほしい」 (40代・女性)と由宇にエールを贈る声も。 第2話は、保育士として働いていた長女、咲季のエピソード。ある出来事がきっかけで実家に戻ってきた咲季を心配する両親だが、なかなか娘が帰ってきた理由を聞きだせずにいる。そんなある日、咲季の恋人だという宮本慎(福山翔大)がいきなり渡利家を訪ねてくる。 この回では平が子どもたちと触れ合うシーンから、妹想いの優しい姉ぶりがにじみ出ていて印象的だったという声が相次いだ。 「お料理も上手で妹をきっかけに子どもが好きだと気づいたやさしいお姉さん。地元でのびのびと幸せに過ごしてほしい」(40代・女性) 「妹が生まれた時からの気持ちを伝えるシーンが印象に残りました。自分も6つ下の妹がいて、生まれた時のこと、一緒に遊んだりしたことを思い出しました」(50代・女性) 「大好きな子どもと触れ合い、真っ直ぐに向き合えなくても、やはり子どもが好きだと自覚する」(30代・男性) また、ナイーブな内容を扱う2話だけに「20代ライフステージ、なにを頑張るか、突き進むのが難しい年齢のなかで向き合う大切さを感じた」(20代・女性)という声もありつつ、「『お母さん、育ててくれてありがとう!』と言われたい」(40代・女性)という母親目線のコメントも上がった。 第3話では、ずっとよき主婦として家族を支えてきた母、羽菜の意外な一面が垣間見られることに。ある日、由宇が、母と年下のイケメン戸部翔太郎(カトウシンスケ)が花束を手に、仲良く料亭に入っていく姿を目撃してしまう。平和な渡利家に波紋が広がるなか、羽菜があることを打ち明ける。 この回では、羽菜より年齢が下の世代からは「セカンドキャリア、好きなものがあるってステキだ」(20代・女性) 、「挑戦することに遅いことはないと勇気をもらいました」(30代・女性)と、彼女を称えるコメントが。 同世代からは「同じくらいの年齢で、第2の青春いいと思いました。私も仕事したくなりました」(50代・女性)、「何歳になっても勉強して前向きになれると思いました」(50代・女性)、「いま、ちょうど資格を取るために勉強中で、羽菜さんと自分の姿が重なり、私も頑張らないとと思った」(50代・女性)、「子どもたちが成人に近づくにつれ、母業から第2の人生を考える。羽菜さんの気持ちがいまの私にとても近く、共感できました」(50代・女性)と、羽菜にとても感情移入でき、勇気をもらえたという方が多かった。 最後の第4話は、祖母の海をクローズアップしたエピソードに。ここでは渡利家の2年後の物語が展開される。劇中で海が亡き夫との思い出を語るシーンについては「大切な人をずっと思っているところ」(20代・女性)、「夫の無事を祈って、朝食を作っていたというエピソードが印象的」(40代・男性)など、琴線を揺さぶられたというコメントが寄せられた。 また、常に家族を大きな心で見守ってきた海の懐の深さについて「丁寧な暮らし、家族の喜ぶ顔のために、家を守っている姿が私の祖母に重なりました」(40代・女性)、「自分がどうしたいかを大切にすることも大事であるが、大切な人の笑顔が自分の源になると感じた」(20代・女性)というコメントも。 そして各話共通のコメントとしては「各々の人物が自分のことに向き合い、答えを出していく過程がおもしろかった」(20代・男性)、「それぞれの『青春』の言葉の意味を考えさせられました」(50代・男性)と、4話で一貫して描かれた“青春”というテーマや、丁寧にすくい上げられた心の機微が、観客にきちんと届いたようだ。 ■五感を刺激するおいしそうな食事シーンと海辺の町の景色 本作で特筆すべき点は、多くの観客の心を捉えた劇中の食事シーンだ。釜揚げシラス丼や⾦目鯛の松笠焼きなど、見るからに食欲をかきたてられそうなメニューを担当したのは、TBSドラマ「VIVANT」や映画『ゴールデンカムイ』(24)など多くの作品に携わってきたフードコーディネーターのはらゆうこ。アンケートでは「レシピを公開してください」というリクエストもいくつかあった。 「どの食事も本当においしそうで、家族で食べるからよりおいしさが増すんだろうなと思えるシーンだった」(30代・男性) 「日々忙しいなかで、走り続けなければと思ってしまいましたが、生きると実感するためのご飯、穏やかな時間こそとっくに必要なのだと感じた」(20代・女性) 「料理がとてもおいしそうで、家族みんなで作るというのがとてもよかったし、家族の仲の良さを感じた」(50代・女性) 「どの食べ物もみずみずしく映っていました」(30代・女性) 「朝から山盛りのご飯をパクパク食べていて気持ちよかった!」(20代・女性) 加えて海辺の町というロケーションについても、「青色が際立つ彩度高めの映像がきれいでした」(20代・女性)、「自然豊かで、自分も住んでみたいと思った」(40代・女性)、「普段スマホばかりで周りの景色に目がいかない日々。景色のいいところでのんびりしたいと思いました」(30代・女性)、「懐かしく、心穏やかになる心沁みる風景」(50代・女性)と高評価だった。 ■各世代に響いた“青春”というテーマと家族の大切さ 各話で挿入されたウルマンの名詩「青春の詩」だが、アンケートではこの詩がとても心に残ったという声が多数上がった。本作のテーマである“青春”だが、それを見慣れた紋切り型のストーリーで描くのではなく、令和を生きるあらゆる世代の物語に着地させたことで、予想外の感動が広がっていったようだ。 「人生思いどおりにならないことも多々あると思いますが、粘り強く向き合うことに、勝利が得られると思います」(20代・男性) 「骨折での入院をきっかけに、現在の仕事(看護師)を目指し、走り続けて10年の今年にこの映画を観られて、もう一度これまでの10年を振り返りたいと思った」(20代・女性) 「4つのエピソードが少しずつつながっていて、やさしい空気感のドラマをもう一度ウェブで見てみたいと思いました。常にいまが青春なのかもなーと思えました」(30代・女性) 「自身のキャリアを考える時が何度かあったが、いろんな人がいろんな形で向き合うことがあると考えさせられた」(30代・男性) 「自分も子育てがひと段落して、去年から好きなことを見つけて楽しい日々を過ごしてます。より家族の大切さに気付かされ、とても共感できました」(40代・女性) また、各回ともヒロインたちの青春物語でありながら、何気ない日常を豊かに描くホームドラマでもある。コメディリリーフ的な父・俊夫や、ほかの男性キャラクターたちの存在感も大きかったようで、お互いに支え合う家族や、彼女たちの背中を押す人々との交流も大きな感動につながったようだ。 「家族それぞれ別々の人生を歩みつつも、根本には家族のキズナやつながりを感じられるいい作品でした」(30代・男性) 「身近な人の大切さ、すばらしさを感じられた。家族の存在っていいなと改めて思えた」(20代・女性) 「女性が就職したり、キャリアを再開したりするだけではなく、様々な道を祝福していてよかった。女性の成功を喜び、悲しみに共感して涙する男性たちもステキでした」(20代・女性) 「幸せを持続しながらも形を変えていく家族の形が印象的だった」(40代・男性) 「温かいシーンが多くて、心がゆったりしました。皆さんの豊かな表情と景色、そしておいしそうなご飯を見てお腹空きました」(30代・女性) これらの感想を総合すると、本作は家族や友人など身近にいる人たちの大切さをかみしめる作品であると共に、人生の岐路で悩んでいる人にも響く物語となっているようだ。「悩んでいるなら、息抜きに少し観てほしい」(20代・男性)、「いまをしっかり生きる、楽しもうと思わせてくれる映画」(50代・女性)、「毎日おいしいご飯を一緒に食べて、笑って暮らしたいと思える映画」(30代・女性)、「目に心においしい作品」(60代・男性)というコメントにも大いにうなずけた。『ミライヘキミト。』は、作品公式YouTubeチャンネルから気軽に観られるので、猛暑の夏に心へのビタミン剤として、このとても温かい物語を感じ取ってほしい。 取材・文/山崎伸子