ダンプ松本『極悪女王』大ヒットで令和に全女イズ夢 爆発! 感情移入せずにいられない...昭和女子プロレス黄金期の舞台裏が面白い
今回の撮影に全面協力したのが、千種だった。千種は代表を務める団体マーベラスの道場を貸し出し、所属選手も必死になって、出演する女優陣にプロレスを叩き込んだ。一時はマーベラスの興行よりも撮影を優先させた時期もある。それほど千種は自分たちがやってきた時代に誇りを持っているとともに、今回の作品を再び女子プロレスを世間に広めるチャンスと捉えていた。 そんな千種の気持ちや女優陣の覚悟は全女のOGたちにもしっかりと伝わっており、作品公開後に事実と異なることへの指摘はあっても、非難する声は全く聞かない。また当時のピリピリ感を巧みに操作していた松永兄弟の存在も欠かせない。残念ながら次男の健司副会長は描かれなかったが、斎藤工が演じた俊国社長(マネージャー)はドラマの核になっていた。松永兄弟を描いたことで、この作品から昭和の“全女イズ夢”を感じた人も多いはず。まさか令和になって松永兄弟を検証する日が来るとは思わなかった。 『極悪女王』を見て、この時代に興味を持たれた方は、阿部四郎も含めた登場人物(ラブリー米山は実在しないが)を調べた上で、YouTubeなどで残された動画を見ながら答え合わせをしてもらいたい。答え合わせをしてからもう一度見るとさらに楽しめるはずだ。 今のプロレスにあのピリピリ感を出せるか? と言われたら出せないだろうし、今のファンには受け入れられない気もする。ただ、ああいう凄惨な試合の数々が、長きにわたりフジテレビ系のゴールデンタイムや、日曜の夕方に見られたのは事実。全女のビルを駐車場になっていた跡地に作り直したと聞いた時にはビックリしたが、世界で勝負するNetflixが織りなすスケール感溢れる作品となった。あの時代の熱気に触れられるだけでも価値あるものが出来たと思う。 しかし、松永兄弟が選手を焚き付けながら仕掛け続けることに不満を抱いた選手が最後まで抵抗していく姿には、こちらも感情移入せずにはいられなかった。そういう意味で、クラッシュギャルズと極悪同盟の抗争(特に千種とダンプ)は、松永兄弟と彼女たちが戦いながら作り上げた最高傑作と言っていいだろう。(※文中敬称略) 取材・文⚫︎どら増田