クマ突進、ガラス戸破壊 加賀・山代、2住宅の敷地に出没 仁王立ちの成獣、男性に迫る
●「逃げるのに必死やった」 3時間後に駆除 10日朝、加賀市山代温泉北部2丁目の住宅街に出没したクマは、住宅に突進してガラス戸を割ったとみられることが、居合わせたリフォーム業男性への取材で分かった。クマは続いて侵入した別の住宅敷地でも窓ガラスに突進、住民女性を襲おうとした。付近に約3時間とどまった後、駆除された。けが人はいなかった。専門家はクマに至近距離で出くわした場合、興奮して襲いかかってくる場合があるとして、日頃から周囲に注意するよう呼び掛けている。 【地図】クマの出没現場 市や大聖寺署によると、駆除されたクマは体長約1・2メートル、体重約60キロで、3、4歳の雄の成獣とみられる。 リフォーム業の男性(74)によると、午前7時10分ごろ、作業のため住宅1階のガラス戸を開けたところ、約3メートル先の庭木の下にいるクマと遭遇。仁王立ちになり飛びかかってきたため、慌てて戸を閉め屋外に逃げた。110番通報して警察官と住宅に戻ると、ガラス戸が割れており、男性は「逃げるのに必死やった」と振り返った。 ●女性「追い払おうとしたら来た」 その後、クマは近くの住宅敷地に移動。住民の女性(80)は午前8時ごろ、西側の部屋から外の様子を見ると、クマが窓ガラスに向かって突っ込んできた。室内にいた女性は「窓をたたいて追い払おうとしたら、クマがまた突進してきた」と声を震わせた。 近くの空き地には柿の木があり、周辺の道路にふんが散乱していた。付近住民の男性(43)は「子どもがよく草むらで遊んでいるので怖い」と話した。山代温泉では2020年10月、男女3人がクマに襲われ負傷した。近くに住む男性(64)は「通学路なので、けが人がいなくてよかった」と胸をなで下ろした。 現場は市文化会館の南側約80メートルの住宅街。同日午前1時10分ごろには、現場から約400メートル離れた山代温泉の県道交差点付近でも成獣1頭が目撃された。市は同一の個体とみている。小松市四丁町では午後5時40分ごろ、念仏林グラウンド付近で近隣住民が体長約1メートルの成獣1頭を目撃した。 県によると、県内のクマの目撃件数は2日時点で269件。2005年以降、20年の325件に次いで多い。加賀市の75件が最も多く、次いで金沢市49件、小松市47件。人身被害は3件3人で、県は「出没警戒情報」を出している。 クマの生態に詳しい県立大の大井徹特任教授は「クマはめったに人を攻撃しないが、10メートル以内の近い距離で刺激すると向かってくることもある」とし、至近距離で出くわした場合は静かに後ずさりして離れるのが望ましいとした。