世界的シェフが大興奮「日本の“意外すぎる食材”」 「伝説の農場」を訪れ、大喜びした「あの野草」は?
そう、いわゆる「あんころ餅」を作ったのだ。 納屋の壁に掛かっているのは、餅つきに夢中になっているシェフの姿をとらえた写真だ。 日本人からすればあまりにもありふれた食べ物である一方、フランス人シェフにとっては「まったく新しい出会い」だった。 ガニェール氏は「興味津々だった」と、浅野は笑って振り返る。 「シェフは最初びっくりしていたけど、まあ食べること、食べること。『ヨモギはフランスにもあるけど、こういう食べ方はしない』と言ってね」
帰りがけに、「今回の日本滞在で、今日がいちばん楽しかった」とガニェール氏は言った。 その後ろ姿を見送った浅野は、「日本のレストラン業界でこれから起きる変化」がはっきり見えたという。 当時の日本では、フランス料理であればフランスの、イタリア料理ならイタリアの食材を使うのが当然だった。だが、「この先は違う」と、浅野は予見したのだ。 「ジャンルにとらわれない素材使いをみんながするようになるだろう、と思った。最近、日本のシェフたちが世界的にも高い評価を受けているのは、そういうことじゃないかな。日本にしかない食材を積極的に使うようになっているね」
■土の上を歩けば「通じ合う言葉」がある 2022年夏、浅野はイタリアのシチリア島で10年連続ミシュランの星を守ってきた「バイバイブルース(byebyeblues)」のシェフ、パトリツィア・ディ・ベネデット氏を農場に迎えた。 ベネデット氏は、国内でイタリアンレストランを複数店舗展開するサローネグループと提携し、東京・丸の内に「バイバイブルース東京」をオープン。開店に先駆け、自ら東京近郊の農家を回って食材を探していた。
誰が来たときでも、浅野は同じことをする。 畑を歩き、「自分がどのようにその作物を育てているか」を話し、その場で収穫して食べてもらうのだ。 試食や撮影をしながら、ベネデット氏は通訳を介して浅野の話に熱心に耳を傾ける。同行したサローネグループ統括料理長の樋口敬洋氏が、その日のことを振り返る。 「パトリツィアシェフは、浅野さんの好奇心と情熱、野菜の持つ甘み、種類の多さに驚いていましたね。あと、早採りしてミニサイズで出したり、実を食べる野菜なのに花を出荷したりといった“表現方法”が面白いと言っていました」