【漫画家に聞く】上司のマウントを新紙幣の知識で撃退! 痛快で学べるSNS漫画『2000円札って知ってる?』
2024年7月から発行され、多くの人が慣れ始めた「新紙幣」。しかし、それぞれの紙幣に描かれた渋沢栄一(一万円札)、津田梅子(五千円札)、北里柴三郎(千円札)という人物について、よく知らない人も少なくないだろう。7月下旬という絶好のタイミングでXに投稿されたオリジナル漫画『2000円札って知ってる?』は、新紙幣発行というトピックについて、“社会人あるある”の要素を交えながら楽しく学ばせてくれる作品だ。 上司の“新紙幣マウント”をどう撃退? 漫画『2000円札って知ってる?』 仕事の外回りをしている時、後輩の津田に喫茶店で休憩しようと提案する上司の北里。アイスコーヒーを飲みながら北里のダル絡みを津田がいなしている中、ふと新札が発行されたことが話題になる。北里はお札に描かれた人物に関する知識マウントをはかるが、津田が痛烈なカウンターを打ち込んで――。 小学校時代にお姉さんが買ってきた「週刊少年ジャンプ」(集英社)に載っていた『ドラゴンボール』を読んだとき、「アニメより先の話が読める!」「というか絵すげぇ!」と感動を覚え、そこから『幽☆遊☆白書』に心を奪われたという作者のかんぱちさん(@mangakansei)。数か月前までは自衛官として働いていたが、「漫画制作に力を入れたい」と思って転職したと話す。そんな漫画家を目指して奮闘しているカンパチさんに、本作の誕生秘話など話を聞いた。(望月悠木) ■「お金は使わないとただの紙」 ――『2000円札って知ってる?』を制作した理由を教えてください。 かんぱち:職場で新札の話題になった際に「五千円札と千円札は誰だ?」と疑問が浮かび、いざ調べてみたのですが「えっ?誰!?」となったのがキッカケです。自分以外にも知らない人が多く、「そういえば旧札の人物も誰だっけ?」となりました。当時はネタを探していた時で、「時事ネタにもなるし、漫画にしたら面白いかも」と思って描き始めました。 ――その後、どのようにしてストーリーを膨らませていきましたか? かんぱち:「新札が発行されると旧札をだんだん見なくなるな」と思い、そこから「そういえば2000円札ってあったな!」とハッとしました。2000円札の人物が全然思い出せず、調べた時に意外で印象に残ったため、「いっそのこと登場人物にしたら面白い」と考え、このタイミングで新札の「津田梅子」と「北里柴三郎」の名前を登場人物にすることを決めました。 ――お札を軸にどんどんストーリーが広がっていったと。 かんぱち:また、「お金は使わないとただの紙」と言うことも伝えたかったので、最終的に大事にしていた2000円札を使うオチを考えました。他にも、言葉遊びが好きなので「新札」と似ている言葉で「新卒」を思い付き、「新卒の社会人の話にしよう」「新卒ということは先輩の会社の上司がいるよな?」「その人とお金に関する知識でぶつけ合わせよう」という感じで広がっていきました。 ■いつか背中を押せる存在に ――本作はスピード感が魅力的でした。作中のテンポの作り方を教えてください。 かんぱち:北里を使いました。北里は最初はウザい感じですが、基本的にはノリの良いキャラです。終盤まで感情を乱さない津田とは違い、感情の起伏を激しくできるキャラですので、その勢いで作品全体を引っ張ってもらいました。また、一番最初に漫画を読むのは自分なので、「自分が読んでいて面白いな」という感覚を頼りに描いています。 ――基本的に2人の会話劇でストーリーが進みます。つまりは場面が変わらないため、単調になってしまうリスクがありますが、その辺りはどのようにケアしましたか? かんぱち:何気ない会話の中で上下関係を入れ替えたり、津田は先輩の北里に終始敬語ですがちょくちょく強気な発言をさせたりなど工夫しています。また、北里が途中から敬語になったり、津田の呼び方をコロコロ変えたりなどして、パワーバランスがおかしくなるようにしました。ただ、あくまでも先輩後輩の関係は崩さないように注意しました。また、「自分が北里だとしたら津田のような知識がある後輩と話すならこうだな」とイメージしながらセリフを決めていきました(笑)。 ――セリフで言いますと「5ページ目でも…」など、ところどころメタ的なセリフが出てくるのも面白かったです。 かんぱち:そういったセリフは「この漫画は伏線があります」とハッキリ言いたくて採用しました。また、読者さんに「他にも伏線があるんじゃないか?」と楽しんでほしいと思い、このセリフをチョイスしています。 ――最後に今後の目標など教えてください。 かんぱち:現在、主にSNSと漫画投稿サイト「ジャンプルーキー」に漫画を投稿しています。1年半前から毎月読み切り漫画を描いてきたこともあり、ありがたいことに今は読んでくださる人が増えました。今後は「もっと人の心を動かすような作品を生み出し、漫画だけでなく映像化もしていきたい」と思っています。私は数か月前まで自衛官として働いていたのですが、38歳になって「漫画家になりたい」という昔からの夢を叶えるため、転職して今必死に漫画制作に取り組んでいます。正直挑戦を始めることにかなり時間かかってしまいました。年齢も決して若くはありませんが、同年代の人たちやそれ以外でも、やりたいことがあるのにいろいろな理由で一歩踏み出せずにいる人たちの背中を押せる存在になれれば嬉しいです。
望月悠木