高円寺の人気銭湯・小杉湯 場と人をつないで「銭湯のある暮らし」を事業化したシェアスペース
まちを鼓動させ、地域を元気にしている話題の温浴施設からビジネスを学びます。銭湯、日帰り温泉、サウナといった“入浴の場”に新たな意味づけをし、温浴文化を再定義したイノベーターたちにインタビュー。 異質なものの掛け合わせで新たな付加価値を作る方法やビジネス哲学をお届けします。 高円寺の人気銭湯・小杉湯の隣のシェアスペース「小杉湯となり」を運営する、銭湯ぐらし代表の加藤優一さん。「銭湯のある暮らし」を広げることを目指す加藤さんの活動から、まちと暮らしのデザインを学んでいきましょう。
【加藤優一 YUICHI KATO】 銭湯ぐらし代表、東北芸術工科大学専任講師 建築家、株式会社銭湯ぐらし代表取締役、一般社団法人最上のくらし舎共同代表理事、OpenA・公共R不動産パートナー、東北芸術工科大学専任講師。 1987年山形県生まれ。 東北大学大学院博士課程満期退学。 デザインとマネジメントの両立をテーマに、建築の企画・設計・運営・研究に携わる。 銭湯を起点にしたシェアスペースの運営や、地域資源を生かした空き家再生など、事業の視点からまちづくりを実践中。 著書『銭湯から広げるまちづくり小杉湯に学ぶ、場と人のつなぎ方』(学芸出版社)が発売中。
創業メンバーは小杉湯の常連客
東京の中央線文化が色濃く残る高円寺の人気銭湯、小杉湯。昭和8年創業の歴史を感じさせる宮造りの銭湯には、平日約500人、休日約900人もの利用客が訪れます。 そのにぎわいの一端を担うのが、加藤さんが代表を務める株式会社銭湯ぐらしが運営する「小杉湯となり」。実は同社の創業メンバーは小杉湯の常連客。加藤さんも大学卒業後に上京し、設計事務所で働いていた頃に小杉湯に通っていた常連客の一人です。 加藤さんが小杉湯通いを始めて1年ほどたったある日。小杉湯3代目の平松佑介さんと雑談をする中で、何げなく「仕事で全国各地の地域再生に関わっている」と伝えたことが「小杉湯となり」誕生のきっかけとなりました。 加藤「当時、小杉湯の隣にあった風呂なしアパートの建て替えが予定されていたのですが、解体までの1年間、アパートが丸ごとぽっかり空いていたんです。 最初は解体後に何を建てたらいいかを平松さんから相談されたのですが、既存のアパートを活用したら面白いのではという話で盛り上がってしまって」