帰宅は2週間に1度…トラック運転手の過酷な日常 迫る2024年問題、荷主の対応も必要
家に帰れるのは10日間から2週間に1度。昼夜を問わず、配送のためにハンドルを握る。食事も睡眠も車内で済ませる。「年末年始の前後は50日間帰れなかった」。大型トラックの男性運転手(60)の顔には、長年の疲れがにじんでいた。 3月上旬の正午過ぎ。国道2号西広島バイパス沿いの佐方サービスエリア(廿日市市)で取材に応じた男性は、夜の長距離運転に備えて運転席のカーテンを閉め、目を閉じた。 男性は関西の運送会社が山口県内に置く拠点に所属する。会社は大手宅配事業者の2次下請けで、男性の配送エリアは中部から九州までと広い。決まったルートはなく、広島―福岡、大阪―名古屋など不定期ルートを走り回る。年間の走行距離は地球4周以上の17万キロに達する。 男性は「大手事業者が対応できない時間帯やルートを請け負っている」と感じる。時間指定は厳しいが、高速料金をもらえず山口―大阪間を一般道で移動することも。会社では過酷な労働環境に耐えきれずに退職者が相次ぎ、人手不足が一段と深刻になっているという。 トラック運転手に残業規制が適用される「2024年問題」が4月に迫る。男性は1日に14、15時間を配送に費やす。「月や年間の残業時間がどれぐらいになるか自分でも分からない」。会社からは4月以降の働き方について説明はないが「運転手は走ってなんぼの職業」と割り切る。 年収は約500万円と決して多くはない。それでも「残業が減ると給料も減るので今のままでいい」と規制に反対する。 下請けに長時間労働のしわ寄せが及んできた物流業界。近隣エリアを回る短距離の運転手も課題を抱える。荷物の積み降ろしなどの荷役や集荷、納品先での荷待ちだ。 食品を主に扱う広島県内の運送会社で働く男性運転手(39)は、青果市場で積み込んだ野菜や果物を地元スーパーの店舗に届けている。飲食店や病院などに食材を運ぶこともあり、1日の配送先は10~20カ所。労働時間は12~13時間で半分以上は荷役や荷待ちが占める。 「スーパーによっては店舗に青果を届けるだけでなく、冷蔵庫に入れたり、棚に仕分けして置いたりする作業を求められることもある」と明かす。飲食店や病院では配達に漏れがないか一緒に確認することも多い。「24年問題で運転手が注目されているが、荷主の対応にこそ関心が集まるべきだ」と訴える。 政府は2月、24年問題への対応策を盛り込んだ中長期計画をまとめた。倉庫作業の自動化などで運転手1人当たりの荷待ちと荷役の時間を30年度までに年125時間削減する方針などを示した。 広島県内の別の運送会社の男性運転手(59)は、残業規制で運転手の働き方を改めようとする政府の方針に賛成する一方、対応策は「現実離れしている」と指摘する。「運転手が向き合っている現場をしっかりと見ずに計画を作っても、物事は進んでいかない」。淡々と突き放した。
中国新聞社