塩崎厚労相「屋内禁煙の伝統を日本が破るのか」五輪見据え受動喫煙対策訴え
受動喫煙対策は感染症対策と同じ「科学に基づいてやる必要がある」
塩崎厚労相が厳格な対策を求めるのは、受動喫煙による健康被害が明白とのデータがあるからだ。 国立がん研究センターの発表によると、受動喫煙を受けなければ亡くならずに済んだ人は国内で少なくとも年間約1万5000人に上るという。厚生労働科学研究班の推計によれば、受動喫煙による超過医療費は年3000億円以上とされる。 そして、国民健康・栄養調査によれば、非喫煙者が受動喫煙被害に遭遇する機会として一番多いのが「飲食店」なのだという。世界保健機関(WHO)によると間仕切りなどによる分煙では、受動喫煙被害の防止効果が乏しいことも明らかになっているという。 こういった状況を受け、2010年にはWHOと国際オリンピック委員会は「たばこのないオリンピック」の推進で合意。それ以降、すべてのオリンピック開催地と今後の開催予定地は原則屋内禁煙となり、リオ、ロンドン、ソチ五輪などでも罰則を伴う法規制を行ってきた。合意前の、北京・バンクーバー五輪でも屋内禁煙は実施されている。 塩崎厚労相は「感染症対策で人の命を守らなきゃいけないというときには、やっぱり科学できちっとした感染症防護策を導入しますよね。それと同じことだと思います。(厚生労働省案に反対の人は)オリンピックをどうやって迎えるんですかということについての代案をぜひお示しをいただきたい。海外の方は多分ホテル等飲食店、それも飲み屋さんじゃなくて普通のところで日本の食を楽しみたいという人たちが多いと思うのです。ここをどうするか。(屋内禁煙でないという点が)やはり(日本の)評価を決めてしまうと思うので、そこのところもじっくり議論をさせていただけたらなと思います」と語った。
都議選の影響について
都議選では、各党が「受動喫煙対策」を争点の一つとして戦い、「子どものいる家庭内での禁煙まで目指す」ことを掲げた地域政党・都民ファーストの会が圧勝する結果となった。 都議選で受動喫煙策が議論に上がったことついて、「大いに議論していただきたいと思う。(議論することで)気がつかなかったことにも気がつくように(なる)。私だって、随分学びましたから。東京オリンピックというぐらいですから、都議選で、各党いろいろな表現ぶりで受動喫煙対策を標榜されていますけれども、当然そこでの議論が国政に影響することは一定程度あると思います。一つの世論調査に代わる本当の声にもなるのでしょう。何を考えて1票を入れたかというのは、いろいろ人によって異なるのでありますが、選挙キャンペーン中の議論とか、争点になっていることなどを考えてみれば、やはり何らかの影響はあるんだろうと思いますね」と語った。 (インタビューは6月28日に実施) 【塩崎恭久(しおざき・やすひさ)】 1950年11月7日生まれ。愛媛県出身。1975年3月東京大学教養学部卒業。同年4月日本銀行入行。1982年6月ハーバード大学行政学大学院修了。1993年7月衆議院議員当選(旧愛媛1区)。1995年7月参議院議員当選(愛媛選挙区)。2000年6月衆議院議員当選(愛媛1区、当選6回)。内閣官房長官・拉致問題担当大臣、外務副大臣など歴任。2014年9月から現職。