フィギュア界の新星、宇野は羽生の牙城にどこまで迫れるか
フィギュアスケートの全日本選手権が26日より長野で開催されるが、注目されているのが、先のグランプリファイナルのジュニアで優勝を飾った宇野昌磨(17歳、中京大中京高)だ。バルセロナで行われたGPファイナルでは、ショートの3位からの逆転V。ノーミスで演技したフリーでたたき出した163・06点と、238・27点の合計点は、ジュニアの世界歴代最高得点で、日本人の優勝は2009年の羽生結弦(20歳、ANA)以来、5年ぶりに3人目の快挙となった。来る全日本は、怪我から完全復調した羽生、町田樹(24歳、関大)、無良崇人(23歳、HIROTA)という日本男子のビッグ3の優勝争いになると見られているが、ジュニアの宇野は、その牙城に果敢に挑む。 「シニア相手だと無難なプログラムでは厳しいと思います。攻めていきたいです。悔いの残らないいい演技をしたいと考えています」 可愛い顔をしているが、気持ちは強い。 宇野が全日本で表彰台に上がる可能性があると予想するのは、元全日本2位でインストラクター及びWEBサイトのアスリートジャーナルで評論家活動をしている中庭健介氏だ。 「宇野選手が今回の全日本で台風の目的な存在になって羽生選手、町田選手、無良選手の3人の一角を崩す可能性は十分にあると見ています。宇野選手がグランプリファイナルのフリーで出した163点はシニアでも表彰台に上がることのできる得点です」 宇野は、昨シーズンの全日本でもショートで6位に入り、最終滑走グループで演技した(結果7位)。元々、スピード、ステップなどのスケーティング技術に定評のあった宇野が、今季大きく成長した理由は、4回転ジャンプ、3回転半ジャンプの会得だ。開幕前の6月頃か、トリプルアクセルよりも先に4回転のトゥーループが跳べるようになったという。4回転が跳べると次に3回転半ジャンプも完全に習得。8月にはアジアフィギュア杯で優勝して、ジュニアのグランプリシリーズでもフリーに4回転トゥーループジャンプを2つ入れる難易度の高いプログラムにチャレンジしてきた。4回転トゥーループと、トリプルアクセルという難易度の高いジャンプをモノにして、シニアと戦っても胸の張れる得点を記録できるようになった。 前述の中庭氏が言う。 「ジュニア世代では、どんどん体も成長しますから、その変化に応じて、突然、跳べなかったジャンプが跳べるようになるということがあります。4回転が先に跳べたというのは珍しいパターンでしょうが、高校生になって筋力もついてきたのでしょう。例え練習で跳べても試合に落とし込むのが難しく、固めるのに時間がかかったりするのですが、彼の場合、対応能力が高いのです。その裏にあるのは練習量という貯金でしょう。豊富な練習量で基礎ができていたことで、すぐに安定感のあるジャンプを会得しました。驚かされる部分です。また彼は、音をとらえる能力が非常に高く、表現力、ステップ、エッジワークにも長けています」 名古屋の富士中から中京大中京に入学した際には、まだ身長は、1m41cmしかなかったが、現在は、1m58cmと急成長。豊富な練習量に加えて、肉体の変化のタイミングが、4回転トゥーループ、トリプルアクセルという難しいジャンプ技術の会得と合致したのだろう。