佐々木朗希のメジャー移籍 代理人も驚く約100人の記者が会見に詰めかけた理由とは?
【難解な決断が注目度をより大きなものに】 23歳の佐々木はいわゆる"25歳ルール"の対象者であり、現状アメリカで得られるのはマイナー契約に限られる。各チームの海外ボーナスプールの額が一新される来年1月15日以降に契約しても、契約はおそらく500万ドル(約7億5000万円)程度。エース級の働きが期待される大物がそこまでの安価で得られる例はなかなか存在せず、ウルフ代理人が「全30球団というわけではないが、すでに20球団以上が接触してきている」と明かすほどの大争奪戦が勃発するに至った。 日本のファンならすでにご存知の通り、あと2年ほど待てば佐々木はメジャー契約が可能になる。佐々木の潜在能力と将来性を持ってすれば、その時点でマーケットに出れば数億ドルが得られると見られている。ここでの年俸総額の格差を見れば、往々にしてビジネスライクなアメリカの関係者なら、このタイミングでの渡米は「理解が難しい」と考えるのも当然だろう。 テキサス州サンアントニオで11月に開催されたGM会議中、ある代理人は「(佐々木のこの時期の渡米は)クレイジーだよ」と笑いながら話していた。交渉を担当する代理人の懐に入る金額も最終的な契約次第なのだから、割が合わないと考える者も、なかにはいるに違いない。 2017年に渡米した大谷翔平も似たケースだが、佐々木は日本球界ですでにやり残したことがなくなったというわけではない。佐々木は、まだ優勝経験も、1年を通じて先発ローテーションを守った経験もない。日本のように"所属チームに恩返し"という感覚はアメリカでは薄いとしても、ほぼすべての関係者が"ビジネス的にベストのタイミングではない"と考えていたはずだ。 もっとも、割に合わないことをしようとするアスリートには、新たな魅力とニュースバリューが生まれる。日本で活動してきた佐々木は、アメリカの記者たちが簡単に取材できる選手ではない。WBC以降はまだ一度も米メディアに対応していないこともあって、余計にミステリアスな存在になった。それゆえに、代理人の会見に異様なほどのメディアが集まる事態となったのだった。 今後、すでに渡米した佐々木は各チームとリモートでの交渉を始め、クリスマス前には行ったん帰国。その後、候補をいくつかのチームに絞り、それぞれの都市を訪れて最終面談に臨む。契約は1月15日以降で、長いプロセスが待ち受ける。決着のその瞬間まで、いやそれ以降も、"ロウキ"は現地でも魅力的な取材対象であり続けるだろう。 今後、佐々木のリクルートにはどんなメンバーが起用され、どれだけのチームが最終面接に残るのか。最終的にいったい何が決め手になるのか。異例の獲得競争とともに、アメリカでの巨大な話題性も継続するに違いない。 つづく
杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke