「PM2.5」による大気汚染 地球温暖化が影響か
地球温暖化により中国での高濃度汚染が増加
今回の九州大学応用力学研究所の研究では、今年1月の中国での高濃度PM2.5汚染について、過去10年間の気象条件と東アジアにおけるPM2.5排出量などを分析した。その結果、今年1月のシベリア高気圧の強度が10年間で最も弱く、風速も弱かった。このため高気圧の中心があった北京周辺の中国東部では大気が安定し、PM2.5が高濃度化しやすかったという。地球の温暖化が進行すると、冬季のシベリア高気圧の強度が弱まり、中国では高濃度汚染が発生しやすくなる。このため中国国内での大気汚染対策が進まない限り、高濃度PM2.5汚染が増加すると、研究グループは指摘する。 ■日本への相関関係は慎重な結論 そうなれば、さらに日本への中国からのPM2.5の“越境汚染”が心配されるが、研究グループは「今年1月の福岡の平均濃度には北京と顕著な相関は見られず、中国から日本域への汚染質の輸送量には大きな増加はなかった」と慎重な結論だ。
環境省は”越境汚染”とみている
しかし、九州大学応用力学研究所の見解とは異なり、環境省は今年1月は、西日本の広い地域で環境基準(日平均値)を超える PM 2.5 が観測されたこと、都市汚染の影響の少ない九州西端の離島にある国立環境研究所の観測所でも粒子状物質の濃度上昇が観測され、その成分に硫酸イオンが多く含まれていたこと、大気シミュレーションでも北東アジアにおける広域的な PM 2.5 による大気汚染の一部が日本にも及んでいることなどから、「大陸からの越境汚染の影響があった」とみている。その影響の程度については、通常の日本の都市汚染と組み合わさっている可能性が高いので、詳細な解析が必要だとしている。 (文責/企画NONO)