中国、トランプ米政権にらみ外交方針調整も…邦人拘束など日中間の課題は解消されず
【北京=三塚聖平】岩屋毅外相は25日、外相就任後初めて訪中し、王毅共産党政治局員兼外相ら中国要人との会談に臨んだ。中国側は来月に迫るトランプ次期米政権の発足を前に、外交方針を調整して各国との関係改善に動いており日本に対しても対話姿勢に転じている。ただ、スパイ容疑による邦人拘束など日中間には課題が残っており、沖縄県・与那国島南方の日本の排他的経済水域(EEZ)内で中国が設置したとみられるブイが新たに確認されるなど緊張は完全には払拭できていない。 王氏は25日、北京で岩屋氏と会談した際に「中国と日本は近隣同士であり、両国関係は二国間を上回る重要な意義を有する」と指摘。日本側に「中日関係が安定すればアジアがさらに安定し、アジアが安定すれば国際社会でより重要な役割を果たすことになる」と訴えた。 ■日本を特別視はせず 日中関係は、岸田文雄前政権下では緊張含みの状態が続いた。岸田政権が、バイデン米政権と連携して対中圧力の強化に動いたと中国側がみなして反発したためだ。それに対し、石破茂政権は相対的に対中融和姿勢をとっていると中国側は受け止めており、今年10月の政権発足を機に対日姿勢を軟化させた。11月末には新型コロナウイルス禍を受けて停止していた日本人に対する短期滞在のビザ(査証)免除措置を約4年半ぶりに再開した。 ただ、中国が日本を特別視しているわけではない。トランプ次期政権発足をにらみ、米国の同盟国など各国の取り込みを急いでいる。オーストラリアやインドなど各国との関係安定化を進めており、対日姿勢の修正もそうした対外戦略の一環だ。不動産不況を背景に中国経済の成長鈍化が続く中、海外から対中投資を呼び込みたいという思惑もある。 ■「ゼロに戻っただけ」 日中関係筋は「査証免除などポジティブな動きはあるが、マイナスの状態だったのが『ゼロ』にまで戻ったという話だ」と冷静に受け止める。 実際、日中間には重い課題が残っている。アステラス製薬の日本人男性社員などスパイ容疑で中国当局に拘束された日本人は解放されていない。9月には広東省深圳(しんせん)で日本人の男子児童が刺殺される事件が起きており、日本側は動機など詳細な情報開示を中国側に求めているが中国側は応じていない。
日本政府には、中国側との対話が活性化する状況を踏まえ、課題を解決することが求められている。