センバツ呉・支える人/上 赤澤賢祐部長 数値化で効率的練習 /広島
<第91回選抜高校野球> 「スイングのときに、バットと体の距離が4センチほど離れているよ」。タブレット端末に映し出された数値を見ながら赤澤賢祐部長(40)は、打撃練習を終えた選手に呼びかけた。呉では昨年12月から、打撃や投球を数値化する器具を導入。情報科の教員でもあるため、器具を使った指導を任されている。 導入したのは、スポーツメーカー「ミズノ」が開発した二つの器具。スイングスピードや軌道を計測する「スイングトレーサー」と投手の球質を測る「MA-Q(マキュー)」だ。スイングトレーサーは、理想の打撃フォームにどれほど近づいているかが数値に現れる。「マキュー」は投手の球質が分かるため、配球を考える捕手にも役立つという。 練習は学校外の公立のグラウンドを使用しているため、時間は限られている。「課題などが数値化されることで、具体的に指示が出せる。練習の効率が上がればさらにレベルアップができる」と語る。田辺舜治外野手(2年)は「自分の弱点が分かりやすい。改善しているかどうかも確認できるので魅力」と話す。 昨春に呉へ赴任する前は、広島市内の高校で野球部の監督を務めていた。その際、タブレットで選手の打撃や投球を撮影し、本人に見せながら指導していた。「口だけで説明するよりも伝わりやすい。何よりも選手が楽しそうに練習をしていた」とIT機器を活用した練習に手応えを感じていた。呉でも同様にタブレットを活用するつもりだったが、ミズノから二つの器具を紹介されて導入を決めた。その成果を試す初の大舞台がセンバツになり、期待を膨らませている。 自身も甲子園を目指した高校球児だった。しかし、憧れの舞台には届かず「自分の教え子を甲子園に立たせたい」と教員を志した。センバツの出場が決まったとき、約20年越しの夢がかなったと思った。「目標はベスト8」と定めているが、選手たちには、野球を通じて人の気持ちや礼儀を学んでほしいとも考えている。「その大切さを理解した上で、選手たちが甲子園で暴れる姿を見たい」【隈元悠太】