「ボクシングは甘くない」4団体王座統一成功も、井上尚弥がタパレスの驚異的粘り強さに脱帽「苦しい表情見せず、読み取れなかった」
12月26日、ボクシングの世界スーパーバンタム級4団体王座統一戦が東京・有明アリーナで開催され、WBC・WBO同級王者の井上尚弥(大橋)がWBA・IBF同級王者マーロン・タパレス(フィリピン)にKO勝ちし、史上2人目となる2階級での主要4団体王座統一を果たした。 【動画】井上尚弥がタパレスをKO撃破!10回にダウンを奪取した衝撃の瞬間! 10回に戦慄の右ストレートが炸裂し、4本のベルトを手中に収めた井上。試合後の記者会見では目の前に置かれた黄金に輝くベルトの壮観な光景に「すごく達成感がある。嬉しいが、ここは通過点として捉えていた一戦。嬉しさを少し噛み締めながら過ごして、次の一戦に向けて頑張っていきたい」と、次戦を見据えながら快挙達成を実感していた。 第4ラウンドに一度はフィリピン人サウスポーからダウンを奪ったものの、「ディフェンス面が思ったよりもすごくて、意外とパンチを当てられなかった」と話し、相手の鉄壁なディフェンスと強固なガードに苦戦。判定決着も「(頭を)よぎりましたね」と認めるほどタフな試合だったが、百戦錬磨の日本人ファイターは冷静沈着だった。 「優勢に進めていたので『倒したい』という気持ちがあった。ただ、そこまで無理してKOを狙えるほどボクシングは甘くない。そこは冷静に進めたいと思った。試合をやりながら、いろいろな駆け引きがあるので。ダウン取って攻め過ぎずカウンター狙ったり攻めたり出させたり、いろいろ考えながら試合を進めていた」 序盤から速くて重いボディへのパンチは効果的だった。ダメージが蓄積された結果、10回に右ストレートがタパレスの顔面を捉えると、再び立ち上がることはできなかった。 「(ワンツーで)崩れ落ちた時は、正直驚いた。これだけ、ダメージが蓄積されていたんだと。タパレスの頑張りというか、苦しい表情を見せないところ、そこまで読み取ることができなかった」 2年連続で達成した4団体王座統一について井上は「リング上で4本のベルトを肩にかけて終わった会場を見る雰囲気は感動的なものだった」と振り返りながら、「この4本のベルトをどうしていくかも考えるところだけど、どうなってもまだ熱い試合を見せていきたい」と強い決意を語った。 気になる今後については、5月に東京ドームで「悪童」と評される元世界2階級制覇王者ルイス・ネリ(メキシコ)、タパレスに敗北を喫した元WBA・IBF世界スーパーバンタム級統一王者のムラドジャン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)なども噂されているが、無敵の4団体統一王者は泰然自若だ。 「決められた試合を全力で挑むだけ。大橋秀行会長にマッチメークを任せているので。どんな戦いが待ってるか楽しみにしたい」 日本ボクシング界に歴史的な金字塔を打ち立てた井上。無敗のモンスターは、次はどんな伝説を我々に見せてくれるのだろうか。 取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)