センバツ高校野球 軌跡 石橋/上 高み目指して部も成長 進学校、狭き門越え選手集う /栃木
第95回記念選抜高校野球大会に、21世紀枠で石橋(下野市)が出場する。同校にとって、春夏通じて初の甲子園だ。進学校ながら、近年、県大会準優勝や地区大会進出など好成績を収めていること、地域貢献と障害予防、野球人口増加の一翼を担っている点が評価された。2016年から指導する福田博之監督は「本当にうれしく思う。石橋の名前が出た時は、こらえきれずちょっと涙が浮かんできた」と喜ぶ。 同校は17年の第89回大会、21年の第93回大会でも21世紀枠の関東・東京地区候補校に選ばれていた。3度目の今回、ようやく悲願がかなった。 初めて関東・東京地区候補校になった16年度の部員は22人(マネジャー3人を含む)で、1年生には野球未経験者が2人いた。選手が少ないながらも秋季県大会で57年ぶりに決勝に進み、初めて関東大会に出場した。県高野連から「文武両道による部活動が好成績を収め、他校に良い影響を与えた」と評価され、21世紀枠の候補校に選ばれた。これをきっかけに、徐々に「石橋で野球をしたい」と入学する生徒たちが増え始めた。 2回目の20年度は、秋季県大会で作新学院を破るなど、接戦を次々と制して準優勝した。部員は31人(マネジャー4人を含む)に増えていた。福田監督も選手も期待を込めて吉報を待ったが、届かなかった。結果を聞いた福田監督は目を赤くしながら「気持ちの整理がつかない」と絞り出すのがやっとだった。 土日のオフを挟み、週明けの朝。出勤する福田監督の足取りは重かった。だが学校に着くと、選手たちは月曜に行っている学校周辺のごみ拾いに、いつもと変わらない様子で取り組んでいた。福田監督は「切り替えて、しっかり日ごろの活動をしていた。子どもたちのたくましさを感じて励まされた。自分がもっとしっかりしないと」と気が引き締まった。生徒たちの姿で、福田監督は新たな気持ちで再スタートすることができた。 同校は13年から毎年12月、有志の整形外科医らでつくるNPO法人と協力して、地域の小学生を対象に肩肘検診を兼ねた野球教室を開いている。今回の21世紀枠の選出理由でも「障害予防に高い意識を持ち、先駆的な取り組みにつなげている」と評価された。主将の横松誠也(2年)は「教えることで、分かっていたつもりで理解しきれていなかった部分が明確になり、知識が定着した。子どもたちが楽しそうに野球をやっている姿を見て、初心に帰ることができる」と話す。 「うちは入試の倍率も高いし、特色推薦の条件も厳しい。よく入ってくれるなとうれしく思う。上を目指したい選手が増えて、部のレベルが高くなってきた」と福田監督。今年の部員は37人(マネジャー5人を含む)。先輩たちの思いも背負い、甲子園の舞台に立つ。【鴨田玲奈】