<CLOSE UP HUMAN>三菱重工West・北條史也 タテジマを身にまとい「打順は気にせず、場面によってのバッティングができたら」
ドラフト2位で入団した阪神では11年間プレー。人生節目の30歳を迎える2024年、戦いの舞台は変わり、短期決戦での活躍が求められる世界に足を踏み入れた。新たな働き場所で、持てる力を存分に発揮している。 文=小中翔太 写真=宮原和也、BBM 【選手データ】北條史也 プロフィール・NPB通算成績
戦力アップだけでない加入がもたらしたもの
元虎戦士が再び兵庫県のチームのタテジマのユニフォームに袖を通した。光星学院高(現八戸学院光星高)時代に主軸打者として3季連続甲子園決勝進出の偉業を成し遂げ、プロの世界でも11年プレーした北條史也が三菱重工Westに加入。勝負強い打撃でチームに貢献している。 昨年オフに阪神から戦力外通告を受けると強打の内野手が補強ポイントだった三菱重工Westからオファーが届く。30歳のシーズンはアマチュア最高峰の舞台で戦うことを選び、1月8日の始動日からチームに合流した。 「いろいろなことを吸収して早くチームに溶け込んでいこうという気持ちでした。プロ1年目のときは周りも見れなかったし一番年下で必死でしたけど、今回はある程度周りも見れる。でも選手から見られてるなという視線は感じて最初はやってました」 それもそのはず。チームには若い選手が多く、世代的に北條は甲子園のヒーローなのだ。エースの竹田祐(明大)は光星学院高が甲子園決勝進出を果たした2011、12年は小学6年と中学1年の年だった。「一番、甲子園を見ていた時期ですし、見にも行っていたので。北條さんのバッティングフォームをマネしてました。その人と野球できると聞いたときには楽しみでした」と目を輝かせた。
大阪桐蔭高出身で入社1年目ながらマスクをかぶる石井雄也(関学大)にとっても、その背中から学ぶことは非常に多い。 「将来的にはプロを目指していますし、北條さんが入ってきてどういう練習をどういうレベルでやっているのか話をしてもらって、あの世界に行くにはあれだけやらないといけないなと刺激も受けますし、頑張ろうという気持ちも出てきます。(大阪)桐蔭と光星(学院)の試合を見て桐蔭のことを知りました。自分、阪神ファンなんで北條さんのことはずっと知っていて、その人がチームメートになって。このチームでも一番考えているんちゃうかと思うぐらいバッティングとかも考えて練習していて。こういう人でも戦力外になってしまうんだというのは衝撃的でしたね」 北條の加入は単なる戦力アップにとどまらず意識の向上ももたらした。それは北條自身が取り組んだことの成果でもある。 「結果は出ないこともあるのでそれより野球に対する姿勢や練習の仕方、ケガもしてきましたしアップの大事さ、試合前の準備だったり細かい部分を怠らずにしようと。それをやって結果を出したら説得力もありますし、そういう思いでやってます。聞かれたらプロで経験したことを答えられたらいいなと思ってましたし、楽しんでやってます」。この姿勢に津野祐貴監督(日体大)も「ノック中もよく声も出してますしチームを鼓舞してくれてます。若い選手のお手本となるような練習の取り組みなど試合に対する準備を含めて模範のプレーヤーになってくれていると思います」と目を細めた。 そしてもちろん結果も残す。実質的に本戦出場を決める一打を放ったのは北條のバットだった。