熊本地震、1年過ぎ変わる支援の課題 次の災害へ「備え」模索
東日本の教訓、熊本を経て南海トラフへ
こうした長期的な課題は、東日本大震災をはじめ各地の災害でも現れていました。 名古屋市を拠点に全国で災害救援に取り組む認定NPO法人「レスキューストックヤード」は熊本地震の発生直後から、益城町の南部に位置する御船町(みふねまち)で支援を続けています。御船町では関連死を含めて9人が亡くなり、2700棟以上が全・半壊の被害を受けました。益城に比べて支援の薄い地域だったため、町内にスタッフを常駐させて、避難所の環境や食事の改善を支援。さらに復興の専門家らを交えてミニ相談会を早期に開き、過去の災害で支援をしてきた宮城県七ヶ浜町や新潟県川口町、石川県穴水町の住民らを招いて「仮設での暮らし方」などの経験や教訓を語ってもらいました。 中越地震後には川口町の米を愛知県に取り寄せて販売したり、東日本の後に七ヶ浜町の漁師を支援したりした経験を踏まえ、今回は御船町の小規模な製茶工場を持つ農家の再建を応援することにしています。4月14日に名古屋市で報告会を開いた同法人代表理事の栗田暢之さんは「災害発生から1年は、やっと落ち着いて次のことが考えられる時期。被災者のペースに合わせて、名古屋からどう支援をしたらいいかを考えたい」と呼び掛けました。 栗田さんは熊本地震の前から設立の準備をしていた「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD=ジェイボアード、Japan Voluntary Organizations Active in Disaster)」の代表理事も務めています。 JVOADは米国の災害時における官民連携の仕組みを参考にして、日本でも官と民、民と民の連携を深めて、きめ細かな災害対応を進めるためのネットワークです。熊本地震では「火の国会議」の運営主体の一つとなり、KVOADの設立にもつなげました。 5月26日、27日には東京でJVOADとして「災害時の連携を考える全国フォーラム」を開き、熊本地震の経験などが報告されます。それを踏まえて議論される新たな連携のあり方が、南海トラフ巨大地震など次の災害への「備え」となることでしょう。
---------------------------------- ■関口威人(せきぐち・たけと) 1973年、横浜市生まれ。中日新聞記者を経て2008年からフリー。環境や防災、地域経済などのテーマで雑誌やウェブに寄稿、名古屋で環境専門フリーペーパー「Risa(リサ)」の編集長も務める。本サイトでは「Newzdrive」の屋号で執筆