「公演を楽しみにしてほしい」と話す森田剛（鴨志田拓海撮影）

舞台「台風23号」（赤堀雅秋作・演出）が5日から、東急歌舞伎町タワーの「THEATER　MILANO―Za」（東京都新宿区）で上演される。台風を前にした市井の人々の生活を、毒をはらみながら描く。主演の森田剛は「人間を生々しく演じたい」と話す。 静岡辺りの海沿いの町。配達員（森田）は自分の仕事をこなし続ける。小さな町には、介護ヘルパーの田辺浩一（間宮祥太朗）や専業主婦の井上智子（木村多江）、夫で町役場勤務の秀樹（藤井隆）ら、大小の問題を抱えた人々が暮らしている。その泥濘のような営みは、台風到来の予感とともに不穏な気配を増していく…。 演じる配達員には名前がない。「とにかく、指定された場所に指定された荷物を運ぶということをただ淡々とこなしている役」と森田は説明する。「そこにもちゃんと、家族のためだとか、理由があったりして。自分の感情とかは普段押さえ込んでいる」 「赤堀さんの舞台には毒がある」と話す通り、演じる配達員を含め、今作ではどこかにいそうだけれど、決して近くにはいてほしくないような強烈な登場人物がそろっている。「俺はそういう人がいとおしい」と語る。 台本が脱稿したのは稽古が進んでからで、その後も手直しが繰り返された。「今は、赤堀さんが考えた物語の中で、配達員として空間にいたいというだけ。どこを楽しいと思うかとか、どこに感動するとかは、見た人に任せたい」 27日まで。問い合わせは、Bunkamuraチケットセンター（03・3477・9999）。大阪市の森ノ宮ピロティホールで11月1～4日、愛知県豊橋市の穂の国とよはし芸術劇場プラット主ホールでは8、9両日に公演する。