台風15号で道路崩落、爪痕今も 静岡・川根本町文沢地区の避難要請解除 住民帰宅も「林業成り立たず」
2022年9月の台風15号で土石流が発生した川根本町文沢地区の避難要請が解除され、元々生活していた5世帯13人のうち3世帯7人の住民が4日までに、約1年半ぶりに自宅に戻った。土石流を防ぐ工事は完了したが、周辺の林道は崩落したままで、全世帯が農林業を営む同地区の住民は元の生活に戻れていない。住民の柿下正寿さん(56)は「林道の崩壊で管理する林の約5割に行くことができなくなったまま」と漏らし、早期の復旧を訴えた。 同町建設課によると、林道の復旧は28年以降になるという。担当者は「崩壊箇所に向かう途中にある橋2本も老朽化していて修繕が必要。崩壊箇所の復旧工事は橋の工事が終わってからになる」との見通しを示した。同町は台風の影響で約16カ所の道路が崩落したが、復旧したのは5カ所のみと依然爪痕は深く残る。同町の大井川鉄道下泉駅と同地区を結ぶ道路も道幅が狭くなっていたり土砂が残っていたりする箇所があり、本年度中の完全復旧を目指している。 母ちえさん(82)と2人暮らしの柿下さんは「避難中は環境の変化で母が体調を崩してしまうこともあった。住み慣れた環境に戻れて一安心」と胸をなで下ろす一方で、林道の崩壊について「これでは林業が成り立たない」と肩を落とした。 土石流が再び発生する恐れがあったため、同地区の住民13人は22年10月から、同町の町営住宅で避難生活を送っていた。今年4月30日、土石流が発生した沢に堰堤(えんてい)を設置するなどの安全対策が施され、避難要請が解除された。自宅の耐震工事が終わり次第帰宅する住民がいるほか、地区を離れた住民もいる。
静岡新聞社