明白な「国際人道法違反行為」を執拗に繰り返す…イスラエルの常軌を逸した行動に振り回される「アメリカ」と、問われる「日本の外交姿勢」
深まるガザの危機と問われる日本外交の姿勢
4月2日、日本政府がUNRWAへの資金提供の再開を発表した。ラザリーニ事務局長が来日して、ハマス戦闘員との関係をめぐる疑惑を解消する対策について、日本政府関係者に説明をした直後だった。正しいステップだと思われるが、率直に言って、事務局長が来日して説明をする必要があったのかは、よくわからない。再開に向けた儀式であった印象がぬぐえない。 【マンガ】バイデンよ、ただで済むと思うな…プーチン「最後の逆襲」が始まった そもそも資金提供の停止に至ったのは、イスラエル政府がUNRWA職員に10月7日のテロに参加した者がいる、と糾弾し、それにアメリカなどが呼応して資金提供の停止を発表したためだった。ところがイスラエル政府は、その糾弾の証拠を示すことができていない。それどころからUNRWA職員を拘束して自白を強要したという疑惑まで出てきていた。 多くの欧州諸国やカナダはもっと早く資金提供の再開を決めていた。それでも日本政府は慎重だった。国会議員の中に、明白に親イスラエルの立場をとる右派系議員がいる。防衛省・自衛隊も近年イスラエルとの関係を深めていたため、その関係の議員の中にもイスラエル寄りの発言が目立つ者がいる。外務省関係者としては、国内のガス抜きのために「儀式」が必要だったということだろうか。 イスラエルは、これまで安全保障に多大な関心を払う特別な国として知られていた。しかしそのイスラエルにとっても、現在ガザで行っているような一般市民の犠牲を厭わない苛烈な軍事作戦を長期に渡って行ったことまではない。このままとどまるところを知らず突き進み続けて、イスラエルはどこに行くのか。 日本政府もまた、機械的にどちらつかずの姿勢をとろうとするのではなく、より積極的にイスラエルから距離を取るのでなければ、泥沼の袋小路にはまり込んでいくだろう。ガザ危機の性格を冷静に把握して分析したうえで、先を見据えた判断を行っていく必要がある。
常軌を逸したイスラエル軍の行動
日本政府がUNRWAへの資金提供の再開を発表した4月2日、二週間に渡ってイスラエル軍が占拠していたガザのアル・シファ病院の現状が明らかになった。病院施設の面影はなく、建物は完全に破壊されていた。それだけではない。施設内からは400体とも言われる遺体が発見されている模様だ。多くの遺体に拷問虐待の跡があるという。 アル・シファ病院は、昨年10月のイスラエルによるガザ侵攻の直後の11月に、子どもたちが記者会見をひらいて世界にガザの惨状を訴えた場所だ。その直後、イスラエル軍は、アル・シファ病院の地下にハマスの司令部があると主張し、急襲して占拠した。しかしイスラエル軍が、司令部と言えるものを発見することはなかった。ただ、いつ置かれたのかも不明なわずかな数の武器を発見したと主張し、あるいは病院外に入り口がある地下道が病院の下にもつながっているとも主張しただけで、イスラエルは、病院地下を爆破してしまった。 その後もアル・シファ病院が医療活動を続けているのを見て、イスラエル軍はあらためて病院がハマスの拠点になっていると主張し、再び軍事占拠した。そして今回は病院内にいた医療関係者を始めとする人々を消滅させ、施設そのものも消滅させてしまった。アル・シファ病院以外の医療施設も破壊されているので、約200万人の住民がいるガザ区域内に、医療施設が皆無になるという状況となっている。 アル・シファ病院を象徴とするガザ住民の生命維持のための施設への執拗な攻撃は、国際司法裁判所(ICJ)の司法判断を待たずとも、ジェノサイド条約に違反する行為であるとみなさざるをえない。「ハマスがいた」とさえ主張すれば、全ての国際人道法違反行為が免責されると信じているかのようなイスラエル政府の行動は、控えめに言って常軌を逸している。現代世界では、戦時中の国際人道法違反は多発しているが、主権国家の政府がここまで明白な国際人道法違反行為を執拗に繰り返し続けている事態は、他に類例が見られない。
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