老後は農家になって自然に囲まれながら暮らしたいです。楽観的な私に現実的な収入を教えてください!
「人生100年時代」をいかに生きるかが大きな課題です。定年後の生活を支えるために嘱託(しょくたく)として残るほか、再就職先を探す人も増えてきました。これまでの環境を変えて、農家になるのもよいかもしれません。ただ、農業で生計が成り立つのかどうか心配な人もいるのではないでしょうか。ここでは、農業経験がない人が知りたい農家の現実について解説します。
農家で生計を立てるということ
質問者自身も認めているように、やはり現実を見ていないといえるでしょう。農業に対して楽観的になれるのは、これまで農業従事者との接点が少なかったのではないでしょうか。自家消費分だけの農産物を栽培するのなら、農業を始めるための初期費用はそれほど掛かりません。作業服や長靴、鍬(くわ)など、最低限必要なものはホームセンターでそろうからです。これまで、自宅のベランダや庭で家庭菜園を経験した人は納得できるでしょう。 しかし、農業で生計を立てるのとは勝手が異なります。就農するには農機具の購入費用はもちろん、栽培する作物によってはビニールハウスなどの設置費用も掛かってきます。農業収入からこれらの費用を差し引くと、収益どころかマイナスになる可能性も少なくありません。 もし、収益が出ても働いた分の報酬が期待できないのが現実です。しかも、年中無休で昼も夜もない場合が多いのです。また、自然災害に遭うと壊滅的なダメージを受けてしまいます。手掛ける作物や経営規模にもよりますが、農業で収入を得るのは厳しいと考えたほうがよいでしょう。
農業収入はどれくらい?
農林水産省の「農業経営統計調査」によると、2021年の農業所得(個人経営と法人経営を合わせた金額)は平均125万4000円になることがわかりました。こちらは「農業粗収益 1076万9000円」から「農業経営費 951万5000円」を差し引いた金額です。 また、個人経営の平均所得が115万2000円で、法人経営の平均所得が424万5000円という点にも注目です。質問者は「収入」と表現していますが、実際は「所得」になります。