年金目減り不可避「高齢者8割就労」の無間地獄…“都合良い数字”で検証する厚労省の姑息
大甘の見通しに不安が募る。厚労省は3日、公的年金の健全性を5年に1度点検する「財政検証」の結果を公表。現役世代の手取り収入に対する年金額の割合を示す「所得代替率」について「5割を維持する」との目標を死守したが、見通しは暗い。 杉咲花「朽ちないサクラ」を圧倒した草笛光子の卒寿パワー…「九十歳。何がめでたい」絶好調 検証は今後の経済シナリオを4つに分類。それぞれ成長率を▼1.6%(高成長)▼1.1%(成長)▼マイナス0.1%(横ばい)▼マイナス0.7%(マイナス成長)──と仮定した。 経済成長が現状に近い「マイナス0.1%」の場合、所得代替率は足元の61.2%から将来的に約2割減の50.4%にまで落ち込む。厚労省が理想として目指す「成長率1.1%」の場合でも、所得代替率は現状より6%減の57.6%だ。 前回2019年の財政検証で将来的な所得代替率が50~51.9%だったことを踏まえれば、低下率に少し歯止めがかかったとは言える。しかし「成長率1.1%」の前提条件は楽観的な数字のオンパレード。実現のハードルが極めて高いのだ。 まず、前提のひとつが「実質賃金の1.5%上昇」だ。実績値は01~22年で平均マイナス0.3%。足元は25カ月連続のマイナスである。また、合計特殊出生率を1.36に設定しているが、昨年は統計を取り始めて最低の1.20という惨状だった。 特筆すべきは、検証に織り込んだ高齢者の就業率の見通し。60代は22年の実績値が62.1%だったが、40年には77.6%に達すると仮定。70歳以上の就業率も22年から40年には7ポイント増の25.2%を見込む。 ■70歳以上の4人に1人が働く 将来的に60代の約8割、70歳以上の4人に1人が働き、年金を下支えする環境こそが、所得代替率5割死守のシナリオなのだ。 「年金制度を維持する安心材料として楽観的な数字を出しているのでしょうが、とても額面通りには受け取れません。本来、理想は働きたい高齢者に働く選択肢があることですが、年金だけでは生活できずに働かざるを得ないのが現状です。政府は過去最高税収なのに国民へ還元せず、財政健全化の名の下に医療・介護などの社会保障費を削っている。都合の良い数字を並べる前に、まずは税の取り方と分配を見直すべきです」(立正大法制研究所特別研究員の浦野広明氏=税法) 年金制度の限界に手をこまねいている失政を棚に上げ、老体にムチ打って働けとは“無間地獄”じゃないか。 ◇ ◇ ◇ 関連記事【もっと読む】では 国民年金の保険料納付期間を5年延長する案についても詳しく報じている。