<挑戦の春・’21センバツ専大松戸>第1部 軌跡/1 チーム先導、結束固め 監督の一喝、2年生に自覚 /千葉
「負けられない。詰まってでも打ってやろう」。十回表2死二塁。打席に立った大森駿太朗選手(1年)は、4球目のボールを思い切りたたいた。打球はレフト前へ。二塁ランナーの奥田和尉選手(2年)が三塁を回り、本塁に駆け込んだ。送球がキャッチャーのミットに収まる。一瞬静まりかえった球場に、「セーフ」と審判の声が響いた。 2020年9月20日、第73回秋季県高校野球大会(県大会)1回戦。専大松戸は延長戦の末、1―0で市千葉に勝った。持丸修一監督は試合後に語った。「思ったより長くなったが、勝てて良かった」。この試合で発揮された勝負強さは、チームの持ち味となっていく。 ◇ ◇ 8月下旬からの新チームの立ち上がりは順調とは言えなかった。1年生は、新型コロナウイルスの影響で部活動に参加できない状態が長引いた。3年生が抜けた後、チームを引っ張るはずの2年生は、自分たちの実力を磨くことで精いっぱいだった。「これまでは単純に声を出して練習していた。これからは何をすればいいだろうか」。石井詠己主将(2年)はそう迷った日々を振り返る。 県大会を目前に控えたある日。「練習やめろ」。実戦形式の練習をしていた部員たちを監督やコーチが一喝した。「一体感がない」「本気になれていない」。監督とコーチの厳しい指導で突然、練習は中止された。 2年生の部員が部室に集まった。「どうすればいいんだろう」。意見を出し合った。打席に立つ部員が思うようなバッティングができていないなか、周りの部員たちの助言や激励の声がなかった。あいさつや礼儀を基本から見直すことや、上級生として1年生を一生懸命引っ張っていくことも約束し合った。新たな決意を監督に伝え、練習が再開した。 「あの日から練習の雰囲気が180度変わった」と部員たちは口をそろえる。結束を固め、気を引き締めたチームに、「絶対に負けられない」という思いが根付いた。それが、粘り強くピンチをしのぎ相手を無得点に抑えきった県大会1回戦の勝利につながった。 ◇ ◇ 1月下旬。快晴のグラウンドで、野球部員たちは練習に汗を流していた。 「フライが風に流されるぞ」「キャッチしてからの送球が遅い」「今の良かったよ」。声をかけ合う時、先輩と後輩の区別はない。部員たちがミーティングで決めたルールだ。上級生もスタメンの部員もボール拾いやバッティングピッチャーをこなす。そんな部員たちを見守り、「もう少し先輩後輩の関係があってもいいと思うけど……」と持丸監督は目を細めた。=つづく ◆ 専修大学松戸高校(松戸市)が3月19日から開催される選抜高校野球大会への切符をつかんだ。試練を乗り越え、初出場の夢を果たしたチームの軌跡を振り返る。 (この連載は長沼辰哉が担当します)