作詞家・売野雅勇、チェッカーズは「“きっと売れるな”と直感しました」藤井フミヤの歌声が耳に残る理由
中森明菜さんの「少女A」で注目を集め、以後、チェッカーズやラッツ&スターのヒット曲の数々、郷ひろみさんの「2億4千万の瞳-エキゾチック・ジャパン-」など、歴史に残る名曲を多数手がけている作詞家・売野雅勇さん。広告代理店でコピーライターとして働いていた青年が、なぜ、稀代の作詞家になれたのか。売野雅勇さんの「THE CHANGE」に迫る。【第3回/全5回】 ■【画像】まるで映画のワンシーン!若き日の売野雅勇さん・かっこよすぎるショット■ 広告代理店のコピーライターという安定した道を捨て、作詞家に転身した売野さん。「少女A」のヒットを皮切りに、河合奈保子さんや荻野目洋子さん、吉川晃司さん、菊池桃子さんなどの人気アイドルの楽曲群のほか、郷ひろみさんの『2億4千万の瞳 -エキゾチック・ジャパン-』、森口博子さんのデビュー曲でアニメ「機動戦士Zガンダム」主題歌として不動の人気を誇る『水の星へ愛をこめて』など、昭和を彩る幅広いヒット曲を多数手がけている。 「郷ひろみさんには、2~3曲しか書いていないんです。巡り合わせというか、運命なのか、ヒットソングやその人の代表曲になる歌詞を書くことが結構多い気がします。 僕は、いわゆる歌詞が魔法のように“降ってくる”タイプではありません。それまでの蓄積とひらめきを上手く組みあわせることで、皆さんが面白がってくれることが多いのかなと感じます。
ありふれた言葉から衝撃を生み出すには?
たとえば、『少女A』という言葉は、新聞や雑誌などでよく見る、ありふれたものです。多くの人は、それを歌詞に相応しい言葉、“歌詞のボキャブラリー”だと思いませんよね。それをあえて使うことで、衝突や衝撃、違和感が生まれるんです。誰もが見過ごしていたところから“これを使ったら面白いな”と発掘したことが、僕の功績なんじゃないかな。誰かが『え?何これ?』と驚きそうなものを意図的に歌詞に組み入れるのは、書いていてワクワクしますね。 ただ、普通は使われない言葉を歌詞にすると、周りから“それはどうだろう。世間が受け入れないよ”と、反対意見も出るかもしれません。そうした考えを想定しながら、みんなが面白がってくれるぎりぎりのラインまで攻めるのがわりと好きだし、それが世に出たとき、たくさんの人が新鮮に感じてくれるのだと思います。 こうした発想は、僕はビートルズから教わったものです。彼らの楽曲“Happiness Is a Warm Gun”のタイトルは、もともとは全米ライフル協会の広告のヘッドラインだったそうです。それを歌にしてしまうのが、平和主義者でシニカルなジョン・レノンのユーモアでもあるし、その方法論はいつか使ってみたいと思っていて、意識的に使用したのです」