ペロシ元米下院議長宅を襲撃した男に終身刑 夫ポール氏は重傷
米連邦下院の議長だったナンシー・ペロシ氏(民主党)と夫ポール氏の自宅に押し入り、ポール氏に重傷を負わせた男に対し、カリフォルニア州サンフランシスコの州地裁は29日、仮釈放なしの終身刑を言い渡した。 カナダ出身で20年以上前からアメリカ在住のデイヴィッド・デパピ被告(44)は2022年10月28日未明、サンフランシスコでペロシ夫妻の自宅に侵入し、ポール氏をハンマーで襲った。現在84歳のポール氏は当時、頭蓋骨骨折などの重傷を負い、6日間にわたり入院した。 デパピ被告は今回、誘拐、第一級強盗、高齢者の不法監禁について、有罪となった。 同被告は殺人未遂や連邦政府職員の家族への暴行など、複数の連邦法違反でも起訴され、今年5月に禁錮30年の有罪判決を受けている。 ペロシ一家は判決後の声明で、「法による正義が果たされた」と述べた。 「2年前に暴力的な押し入り事件があり、『ナンシーはどこだ』と叫ばれてから、この悲惨な襲撃、そのトラウマ、そして将来の攻撃の可能性について考えない日は一日もない」 一家はその上で、この判決が「選挙で選ばれた公人やその家族に対する政治的暴力は容認されない」というメッセージを発信することを望むと付け加えた。 デパピ被告の弁護士は、控訴を予定していると述べている。 アダム・リプソン弁護士は、「これは本当に悲劇的な物語の悲劇的な結末だった」と記者団に語った。 リプソン弁護士は、同被告がメンタルヘルス(こころの健康)の問題と孤独に苦しんでおり、それがプロパガンダに影響されやすい状態を作っていたと主張。より軽い判決を下すよう裁判官に働きかけていたが、成功しなかった。 ハリー・ドルフマン判事は、デパピ被告に同情する気持ちはないとして、減刑には応じなかった。 ドルフマン判事は判決を読み上げる中で、「私はこの事件の被害者に同情する。幸運にも生き延びた被害者に同情する」と述べた。「デパピ被告を二度と刑務所から出られないようにするつもりだ。仮釈放はありえない」。 以前の裁判で公表された事件の動画には、2022年10月28日にデパピ被告が、ハンマーで武装しカリフォルニア州のペロシ氏の自宅に押し入る様子が映っていた。 デパピ被告は屋内でポール氏と対峙した際、ペロシ氏はどこかと尋ねた。ペロシ氏はその時、不在だった。 通報を受けて警察官が現場に到着した際、ポール氏とデパピ被告の両者が1本のハンマーを握っているのを目撃した。 警官のボディカメラ映像によると、警官らがハンマーを放すように命じると、被告はハンマーを振りかざしてポール氏に殴りかかった。その後、被告は警官によって地面に押さえつけられた。 ポール氏は頭蓋骨のほかに腕と手にもけがを負った。ハンマーでは3回殴られたという。 デパピ被告は連邦裁判の際、事件当時ワシントンにいたペロシ氏を人質にとり、自分に「うそ」をついたら「膝頭」を折るつもりだったと供述していた。 ペロシ氏の娘のクリスティーン氏はこの日、ポール氏が書いた手紙を読み上げた。手紙の中でポール氏は、襲撃によって神経を損傷し、自宅で一人で眠ることを恐れていると話している。 AP通信によると、州裁判所で意見陳述する機会が与えられた際、デパピ被告は2001年9月11日の同時多発攻撃に関する陰謀説について長々と語ったという。 また、政府から任命された弁護士たちが自分に対して陰謀を企てていると信じているとも述べたとAP通信は報じ、裁判官が何度も被告をさえぎる場面があった。 (英語記事 Paul Pelosi attacker gets life in prison without parole)
(c) BBC News