「総合型選抜」合格を目指す「専門の塾」とは 合格率・費用の相場は?
大学入試が変化する中で、総合型選抜の受験者が増えています。それに伴い、総合型選抜の専門塾も増えているようです。塾ではどのような指導をしているのでしょうか。また、そうした塾に行かなければ、総合型選抜での合格は難しいのでしょうか。新しい受験の形について解説します。 絶対に行きたい慶応大学、AO入試は不合格だったが…一般選抜で生きた「瞬発力」
6月初旬の夜、早稲田塾の自由が丘校で高校1~2年生を対象にした「論文作法」の授業が始まりました。AI(人工知能)に関する課題文を読み、考えたことを1000字以内でまとめるよう、講師が指示しています。生徒は20人ほどで、3~4人で一つの机を囲んでいます(冒頭写真)。 講師は教室を回りながら、「AIって何のことか説明できる?」「この文章では一番、何を伝えたいのかな?」と聞いていきます。手を挙げて答える生徒もいますが、講師が生徒を指名することもあります。グループでのディスカッションを促す場面もしばしば見られました。 早稲田塾の中川敏和執行役員は、こう話します。 「総合型選抜では多くの大学で小論文を課します。大学によって形式は異なりますが、課題文を読んだ上で小論文をまとめる場合、課題文の内容について正しい理解ができることが必須です。今回の講座ではその技術を身につけます。ディスカッションをすることは、他者の考え方を知ることにつながりますし、面接などで自分の意見を言う練習にもなると考えています」 総合型選抜の専門塾である「AOI」や「洋々(ようよう)」もやり方はそれぞれ異なりますが、小論文の指導に力を入れています。このほか、面接や志望理由書の書き方を指導したり、英語資格を取得するための講座などを実施したりしていることも、共通しています。
自己分析からスタート
総合型選抜の専門塾が最も力を入れているのは、「大学に行く意味や学びたいことを発見してもらうための指導」です。具体的にどのようなことをしているのでしょうか。 AOIでは独自に開発した「自己分析ドリル」に取り組むところからスタートします。同社の木伏聖陽さんは自己分析の意図について次のように解説します。 「自己分析では、過去の経験や現在の思考、感情に向き合ってもらいます。例えば、『休日はどんなふうに過ごしたいですか』という問いに対して、1人の友達と過ごしたいと答える人もいれば、外で大勢の友達と過ごしたいと答える人もいます。こうしてさまざまな問いに答えていくことで自身の選択の基準が明らかになり、『自分とはどのような人間なのか』が理解できるようになります。このステップを踏んでいくことで、いままで漠然としていた将来の夢や目標がはっきりしてきます」 早稲田塾では「ポートフォリオの作成」に力を入れています。ポートフォリオとは、高校時代に取り組んだ部活や委員会活動、ボランティア活動なども含めて、いままでのさまざまな活動に関する記録のことです。 「幼少期にさかのぼり、これまで経験してきた『自分史』を軸に、探究の種の見つけ方や深め方、大学でどんなことを学びたいかを深掘りしていきます。小学校の自由研究や習い事での成果、部活の取り組みなどを振り返ることで、自身の興味や成長、将来像がはっきりつかめるようになります」(中川さん) こうした総合型選抜の専門塾での指導について、洋々の清水信朗代表は、「総合型選抜を料理に例えるとわかりやすい」と言います。 「大学側は受験生に対して『冷蔵庫から材料を選んで、一番おいしいと思う料理を出してみてください』と言っているわけです。ところが、多くの受験生は材料や調味料はたくさん用意しているけれど、何の料理を作るかがまだ決まっていません。その部分をサポートするのがわれわれの役割だと考えています」 いずれの塾もメンター(助言者、相談者)がそれぞれの生徒につき、1対1などのカウンセリング形式で指導しています。生徒の考えを深掘りしたり、問いに対してアドバイスしたりする形で進めていきます。