<上海だより>避けられぬ栄枯盛衰 四川北路の今
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上海を代表するメインストリートといえば、淮海路、南京路などが挙げられます。昔から今も、この二本の道には常に多くの人が集まります。一方で、かつては多くの人で賑わっていたにも関わらず、すっかり人気を失ってしまった道もあります。 それが、四川北路です。
「北四川路にはダンスホール、大衆劇場、広東料理店や茶店、各国の遊郭、日本料理店、浴場、美容院、マッサージ店などが星の数ほど多く立ち並ぶ。南京路や福州路を除くとすれば、北四川路は上海で最も賑やかで一日中車や通行人で混み合っている道である。」 1932年に出版された『上海風土雑記』でこのように記される四川北路は、租界時代からも華やかな道として知られており、戦時中には日本の拠点となった道でもあります。1942年のピーク時には3.7キロメートルほどのこの道には、326軒もの日本のお店や会社が並んでいたそうです。
戦後の上海解放後には道路や建物の修繕なども行われ、市民の日常生活にとって欠かせない商業地区として発展しました。さらに、1990年代初めに上海市政府により大規模な再開発が進められました。前述の南京路や淮海路に次ぐ上海第三の商業街として、「徘徊するなら他の道、買い物するなら四川路」というような広告の謳い文句も上海人の間では広く知られ、人気を博したのです。
しかし、その後は徐家匯や五角場のような商業地区の発展なども受け、買い物をする人たちは分散してしまい、現在の四川北路には以前のような盛況は見られなくなりました。地下鉄10号線の四川北路駅の上にも商業施設がいくつも建っていますが、店内の人は非常に少ないばかりか、多くのテナントには空きが目立ち、もの寂しい空気が漂っています。
当然、近年上海の全体的な再開発の中で、この四川北路もその一環に含まれています。大型のホテルや新しい施設の施工も開始し、これらの開業によって再びこの道に多くの人が訪れることが期待されています。
しかし、毎年のように大型の商業施設が上海のいたるところで開業し、出店するテナントも変わり映えしない状況が目立つ中で、このような施設が新たに増えるだけで人々が戻ってくるとも思えません。元々は多くの文人たちも多く住み歴史建築も残されており、多くの文化的資本を持つ道、地域ですので、大型施設に依存した開発ではなく、道本来が持つ味わいを活かしたリ・ブランディングを検討する必要があるでしょう。