ヒズボラ、新指導者にナンバー2のナイム・カセム師を選出
レバノンを拠点とするイスラム教シーア派組織ヒズボラは29日、新しい最高指導者に、副指導者ナイム・カセム師を選出したと発表した。カセム師は、先月にイスラエル軍のベイルート空爆で殺害されたハッサン・ナスララ師の後継となる。 イスラエルは一連の攻撃でヒズボラ指導部の大半を殺害した。カセム師は今も生存している数少ない上級幹部の1人。 レバノンでの紛争がここ数週間で激化する中での選出となった。 30年以上にわたりヒズボラの副指導者を務めてきたカセム師は、同組織で最も知られた人物の1人だ。 ヒズボラによると、カセム師は組織の規則に従って、29日の評議会で新指導者に選出された。カセム師の所在は不明だが、ヒズボラの主要支援国であるイランに逃れたとの報道もある。 カセム師は1953年にベイルートで、レバノン南部出身の家族の元に生まれた。 ヒズボラの創設メンバーで、ナスララ師の死後は3度のテレビ演説を行った。 その演説で、レバノンに近いイスラエル北部の住民の帰還をイスラエルが保証できる唯一の方法は停戦だと述べた。 カセム師の選出を発表したヒズボラは声明で、カセム師は「この行進において、神の祝福を受けた旗を掲げている」とした。 また、ナスララ師や紛争で死亡した人々をたたえた。 ヒズボラの新指導者は、ナスララ師のいとこで聖職者のハシェム・サフィエディン師が引き継ぐと思われていた。しかし22日、サフィエディン師が約3週間前のイスラエルの空爆で殺害されていたことが明らかになった。 イスラエルのヨアヴ・ガラント国防相はカセム師の選出について、「一時的な任命」であり「長くは続かない」とソーシャルメディアに投稿した。 イスラエルはここ数週間、レバノン各地に空爆を実施している。空爆の標的はヒズボラの工作員やインフラ、武器だとしている。 28日夜にはレバノン東部ベカー渓谷(高原)を空爆。レバノン保健省は少なくとも60人が死亡、50人以上が負傷したとした。ベカー渓谷はヒズボラの拠点の一つ。 イスラエル軍は攻撃についてコメントしていない。 パレスチナ・ガザ地区でのイスラム組織ハマスとの戦闘を端緒とした、イスラエルとヒズボラの交戦は、イスラエルとレバノンの境界線を挟んで1年近く続いており、イスラエルは9月末に対ヒズボラ地上作戦に踏み切った。これは、ロケット弾やミサイル、ドローンを使ったヒズボラの攻撃によって家を追われたイスラエル北部国境地帯の住民の安全な帰還を確保するためだとしている。 レバノン保健省によると、この1年間で同国では2700人以上が死亡し、1万2500人近くが負傷した。 ヒズボラはこの間、数千発のロケット弾やドローンを使ってイスラエルを攻撃。イスラエルによると、同国北部やイスラエル占領下のゴラン高原で少なくとも59人が死亡している。 (英語記事 Hezbollah announces Naim Qassem as new leader)
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