昆夏美×大原櫻子×海宝直人×村井良大SP座談会 ミュージカル『この世界の片隅に』を通じ「戦争下を生きた人々の美しい日々を音楽の力を借りて届けたい」
アンジェラ・アキが紡ぎ出す珠玉の旋律
アンジェラ・アキが紡ぎ出す珠玉の旋律――本作をストレートプレイではなく、ミュージカルとして届けることにどのような意義を感じていますか? 海宝:漫画やアニメを見たときもそうでしたが、具体的に「何に感動した」や「何に泣けた」という感覚ではなく、全体を通して言語化しづらい感動が伝わってきたんです。 今回はミュージカルということで、音楽の力でさらに表現を深めていくと思いますが、他の作品のように壮大なナンバーで歌い上げ、盛り上げる形にはならないと思うので、そこが大きなハードルになりそう。 だからこそ、ずっとミュージカルをつくっている作曲家にはない感性をお持ちのアンジェラさんが作品に携わってくださるのはピッタリだなと思いました。 大原:今作の楽曲を初めて聴いたとき、感動して泣いちゃったんです。海宝さんがおっしゃったように、言語化できない魅力があって、アンジェラさんの音楽の力を感じました。 戦時中というシリアスな時代のお話ではありますが、音楽があることによって受け取りやすくなるのは、ミュージカルならではの素敵な部分だなと思いました。 昆:お二人が言ってくださったことがすべてです。私は原作に温度をすごく感じていて、決して沸点が高いお湯ではないのですが、つつみ込むようなまろやかな温度。それが、その当時を生きてきた人たちが見つけたささやかな幸せに重なってくると思ったんです。 ミュージカルになることで作品の印象が変わってしまうのではないかと心配している方がいるかもしれませんが、作り手の皆さんが原作へのリスペクトをもって向き合ってくださっていると感じたので、私も原作に寄りそった温度感でお届けしたいです。 村井:日本人の気質として、その場では言えなかったけど実はこんな本心を抱えていたということが多いと思うのですが、今作の楽曲は心の声のような歌詞だなと感じました。 ミュージカルになったことで、内に秘めた思いがより伝わりやすくなるかなと。なんと表現していいのかわかりませんが、こみ上げてくる感情をストレートに表現することができ、かつ、原作の雰囲気を保ったまま、お届けできるのではないかなと思いました。