マルコ・ベロッキオ「夜の外側 イタリアを震撼させた55日間」。元首相誘拐シーン映像、著名人コメントなど公開
巨匠マルコ・ベロッキオがイタリアの元首相アルド・モーロの誘拐事件を題材に、フィクションを織り交ぜて壮大な人間模様を描き、第75回カンヌ国際映画祭カンヌ・プレミア部門に出品された巨編「夜の外側 イタリアを震撼させた55日間」が、8月9日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国で順次公開される。映画を構成する6エピソードよりそれぞれ印象的シーンを切り取ったポスタービジュアル6種(デザインは成瀬慧)、モーロが極左武装グループ〈赤い旅団〉に襲撃・誘拐されるシーンの映像、著名人のコメントが到着した。 「夜の外側 イタリアを震撼させた55日間」本編映像 1978年3月のある朝、戦後30年にわたりイタリアの政権を握ってきたキリスト教民主党の党首であり、5度の首相を経験したアルド・モーロが、極左武装グループ〈赤い旅団〉に襲撃・誘拐される──。 世界が注目したその日から55日間の真相が、アルド・モーロ自身、救出の陣頭指揮を執った内務大臣フランチェスコ・コッシーガ、モーロと旧知の教皇パウロ6世、赤い旅団メンバーのアドリアーナ・ファランダ、そしてモーロの妻エレオノーラの視点から描かれる。
〈コメント〉
この誘拐事件は良く覚えている ザ・ベストテンという番組がスタートしたその時に起きたからだ 340分という大作だ スクリーンを見詰めているうちに ふとドキュメンタリーだと錯覚してしまう 激しい動悸と暫しの思考に時を忘れる ──久米宏(フリーアナウンサー) 名作『夜よ、こんにちは』から約20年、 イタリア現代史最悪の誘拐事件に鬼才ベロッキオが再び向き合い撮り上げた超大作。 複数の登場人物の視点の交錯の果てに、何が待っているのか? 現実を土台とするフィクションの傑作。とにかく無類に面白い! ──佐々木敦(思考家) 何を過去の歴史から学んだか まるで私たちの国のざまを映した鏡ではないか。2015年、イスラエルのネタニヤフ首相との会談直後、当時の日本の首相が「テロリストとは交渉しない」と世界に公言し、まもなく人質となっていた邦人ジャーナリストが処刑された。「国家は不動でなければならぬ」。7年後、彼も自国で銃撃殺害された。過去は今・未来を考える糧だ。 ──金平茂紀(ジャーナリスト) これほど面白くていいのだろうか。 思わず戸惑うほどに面白い。 かつて実際に起きた悲劇を中心に据え、外側からの視線によってつくられた複数のドラマ。 1話、2話と進むうち、政治家たちの醜悪な顔とともに、人間の弱さ、狡さがこれでもかと炙り出される。 その仰々しく空虚なラストに呆然とする。 ──月永理絵(ライター、編集者) 監禁現場の外側に冷戦下のどすぐろい政治的現実がうごめく。その埒外で、人間どうしの憐れみの回復を求め、降りかかった受難を拒みつつも引き受ける、魂のうずきの実在感に震撼する。ベロッキオのライフワークたる、イタリア現代史シリーズの高峰をなす傑作! ──後藤岳史(映画ライター、編集者) スクリーンに釘付けになる緊迫の5時間半! そこに映し出されるのは「過去の歴史的大事件」ではなく、まぎれもなく現代へと続くベロッキオ監督の熱く静かな怒りと抵抗だ。 ──中村由紀子(Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下 番組編成) マルコ・ベロッキオの演出は、海千山千の政治家だろうが、武装した革命家だろうが、ローマ教皇でさえ一人のか弱い人間へと引きずり降ろす。タブーをものともしないその自在な剛腕が、再びイタリア史の《闇夜》に風穴を開けた。 ──岡田秀則(フィルムアーキビスト/国立映画アーカイブ主任研究員) 「こんな時にムッソリーニがいれば」 事態はぐらぐらと左右に傾き 彼らの顔色はだんだん悪くなっていく。 宗教にも、政治にも、組織にも ずるずる羽交い絞めにされて 彼らの表情はごりごり固まっていく。 私たちはその顔を見逃がさない。 映画は顔だ! やっぱり「映画は顔だ!」。 ──宮崎祐治(キネマ旬報連載「映画は顔だ!」イラストレーター) 虚実の境を確かな足どりで、しかし大いに揺れながら進む6時間。現実の出来事だから結果は知っているにも関わらず、この息詰まる面白さはなんだろう? サスペンスフルな画は美しくつつましやか。現実の不条理を見つめるその眼差しには、ベロッキオの業が色濃く滲んでいた。 ──銀粉蝶(俳優) いまだに謎が残る、イタリアのモーロ元首相誘拐事件。 人間と政治が複雑に絡み合う今こそ、心揺さぶる映像と物語を通して、「歴史」を学ぼうじゃないか。 ──竹田ダニエル(ライター・研究者) 1978年。ひとりの政治家の誘拐と殺人。 ローマ教皇から、全ての政党と家族を巻き込む。 いやイタリア中を揺るがす、政治における権力闘争と金。 マフィアの暗躍、更に大きな力が介入したかも。夜の闇と内と外。 マルコ・ベロッキオの情熱と理性が、我らの心に火をつける。 ──秦早穂子(映画評論家) これは悪と背信の叙事詩である。また愛と期待のメロドラマでもある。ベロッキオはつねに家庭と権力、夢と解放を描いてきた。要するに、イタリアのすべてを描いてきたといえる。 ──四方田犬彦(映画誌・比較文学研究家)