<軌跡・センバツ京都外大西>/下 攻守で粘り強く復活 王者と互角、渡り合う /京都
あの大阪桐蔭が負けるのか――。2023年11月4日の近畿地区大会決勝。大阪シティ信用金庫スタジアム(大阪市此花区)のスタンドは、異様な空気に包まれた。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 1―2とリードされた京都外大西は、九回表2死から反撃した。松岡耀(2年)が四球で出塁し、相馬悠人(2年)が左前打でつなぐ。田中遥音(2年)も四球で満塁。大阪1位で大会3連覇を狙う大阪桐蔭を追い詰めた。 左打席に入った代打・鈴木雄仁(1年)はファウルを3本打ち、フルカウントまで粘った。だが、8球目を打った球は高々と上がって三塁手のグラブに収まり、37年ぶりの優勝はならなかった。それでも王者と互角に渡り合った戦いぶりは、観客を驚かせ、かつて甲子園の常連だった京都外大西の復活を印象づけた。 京都1位で堂々と乗り込んだ近畿大会だったが、行程は起伏に満ちていた。10月22日の彦根総合(滋賀3位)との1回戦は一回に4番・相馬の適時二塁打で先制。二回は1死三塁から谷春毅(1年)の犠飛で2点目を奪い、強打と機動力でテンポ良く2点を先行する上々の滑り出しだった。 だが、三回に先発・田中が4安打を浴びて2失点。その後は試合が動かず、2―2で十回からは無死一、二塁で始まるタイブレークに突入した。「相手の次の打者が良い。1点でも取って、向こうの監督を悩ませようと考えた」と上羽功晃監督は表の攻撃に入った時を振り返る。ナインは指示通り、犠打で好機を広げ、スクイズで勝ち越し。敵失も絡めて谷、杉浦智陽(1年)、相馬が適時打を放ち、一挙5点。上羽監督の想定を上回る爆発力を見せつけ、苦しみながらも初戦を突破して勢いに乗った。 同29日の準々決勝は、19年夏の甲子園を制した履正社(大阪2位)と相対した。両チーム計25安打の乱打戦となったが、田中が11安打されながらも1人でマウンドを守り抜き、好調な打線の援護を受けて10―7で制した。 耐久(和歌山1位)との準決勝は11月3日。一転して息詰まる投手戦になった。スコアボードに0が並ぶ緊迫した試合展開の中、六回に敵失と犠打で1死三塁として圧力をかけ、松岡が値千金の適時三塁打。田中は11奪三振の好投で完封し、1点を守り切った。 大会を通じて攻守で粘り強く戦い抜いた結果の準優勝。府大会優勝の実績も合わせて評価され、1月26日のセンバツ選考委員会で近畿2番目という高い評価で18年ぶりの「春」をつかんだ。 夏を含めても14年ぶりとなる甲子園出場。「長かった、長かった」。上羽監督は、万感の思いを込めてつぶやいた。チームはついに、トンネルを抜けた。【水谷怜央那】 〔京都版〕