【NBA】ジョシュ・ギディー、サンダーの躍進に取り残された葛藤「みんなにとって良きチームメートでありたかった」
プレーオフのラスト2試合でキャリア初のスタメン落ち
2023-24シーズンのサンダーは再建から脱し、ナゲッツとティンバーウルブズとの厳しい競争を勝ち抜いて西カンファレンスの第1シードとなった。プレーオフのファーストラウンドではペリカンズをスウィープで一蹴。しかし続くマーベリックスとのシリーズで敗退した。 クラブ史に残る素晴らしいシーズンだったのは間違いないが、チームが個々の集合体である以上、全員が心地良く過ごし、成果を上げられたわけではない。ベテランのゴードン・ヘイワードは、若いチームに経験をもたらす存在としてシーズン途中に加入したが、躍進するサンダーで自分の居場所を見いだせなかった。「僕の期待通りにはならなかった。これだけチャンスが少ないのでは、やれることは何もない」と彼は肩を落とす。 それは21歳とまだ若く、生え抜きのジョシュ・ギディーも同じだった。NBAキャリア3年目の今シーズン、彼は大苦戦を強いられた。恵まれた体格を生かした激しいディフェンスと、視野の広さとパスセンスを生かしたプレーメークが持ち味で、今シーズンは課題だったターンオーバーが減っている。しかしこの1年では、チームの成長が彼を追い越すシーンがしばしば見られた。 エースのシェイ・ギルジャス・アレクサンダーは、相手のダブルチームを引き付けてパスを出すのが年々上手くなり、ルーキーのジェイレン・ウィリアムズもフォワードながらアシストのセンスがある。チェット・ホルムグレンもポストアップからプレーを作り出せるセンターだ。こうしてチームに攻撃の起点が増えていくと、ギディーのプレーメークは目立たなくなり、ジャンプシュートが苦手という弱点が浮かび上がってくる。 チームが好調でも、彼は波に乗れていなかった。2023-24シーズン最後の会見で、ギディーはこれらのことを率直に言葉にした。「シーズンを通して浮き沈みが大きかった。それは隠すようなことじゃない」 チームとギディーの噛み合わなさは、プレーオフでさらに高まった。「マブスとの最初の2試合は良いプレーができず、プレータイムも短かった。初戦に勝った時は喜んでいたけど、内心は不安だったし、みんなと上手く絡めずに嫌な感じが出てしまっていたと思う」 マブスとのシリーズでの彼のプレータイムは17分、11分、13分、12分。ファーストラウンドでは平均26.5分の出場だったから、良い気分でいられないのも無理はない。そして第5戦と第6戦で、彼はついにスタメンを外される。レギュラーシーズンの80試合、プレーオフでもそれまでの8試合で先発し続けていた彼にとってはショック以外の何物でもない。先発に抜擢されたのはアイザイア・ジョー。今シーズンの3ポイントシュート成功率41.6%で、フロアを広げることで他の選手のプレーを助けられるシューティングガードだ。 「アイザイアのことは大好きだし、プレーオフという大きな舞台で彼が先発するチャンスを得られたことは本当にうれしかった。そしてコーチの判断は正しかったと納得している」とギディーは言う。 「僕はずっと先発で出場時間が長い立場にあった。それが突然、自分の思い通りにいかなくなった時にどうすればいいのか。最初は自己中心的で、良いチームメートではなかった。でもそんな自分が嫌で、出場時間が5分でも30分でも、ベンチからでも、良きチームメートであろうと決めた。チームメートのことが好きだという気持ちに嘘はないから、できる限りのことをしようとしたんだ」 「シーズン序盤は特にそうだったけど、浮き沈みがあまりにも長く続くと、考えすぎてふさぎ込むようになる。僕がツイてたのは、周囲に僕を気遣ってハグしてくれる人たちがいたことだ。だからこそ、僕自身もみんなにとって良きチームメートでありたかった。何があっても仲間をサポートして、チームがベストを尽くすために自分の役割を果たしたかった」 ギディーの献身は報われず、サンダーはその2試合に敗れてシーズンを終えている。「飲み込むには苦い薬だったけど、僕にとっては必要なことだった」と彼は言う。「いろんな人が僕についてあれこれ意見するだろうけど、僕に向かって『もっと成長しなきゃ』と一番に言うのは僕自身だ。21歳の僕にとっては、この苦い経験をして迎えるオフには意味があると思う。このオフにはもっともっと自分を成長させるつもりだ。そして代表チームに参加してオリンピックでプレーするのも楽しみにしている」 チームの躍進から取り残された形のギディーについては、早くも今オフにトレードされるのではないかとの噂が出ている。全員がオールラウンドな能力を持つサンダーより、典型的なプレーメーカーを必要とするチームに移籍するほうがギディーにとってはプラスかもしれない。だが現時点でサンダー以外は彼の頭にない。「この場所、街、ファン、クラブ全体が素晴らしい人であふれている。ここが僕の故郷なんだ。毎日ここに来てバスケに取り組むことが本当に楽しいんだ」 「来シーズンには自分が違う選手であることを証明したい。そして、このシリーズで起きたようなことは二度と起こさないつもりだ」