リフトアップ&オーバーフェンダーが迫力満点!「タフ系ポルシェ」の実力とは? 名車の後継「911ダカール」は911が秘める“無限の可能性”の象徴
モチーフは名マシン「911カレラ 3.2 4×4 パリ・ダカール」
「本当に『911』の可能性は無限大だな」と思いました。世界限定2500台が世に送り出されたポルシェ「911ダカール」の話です。 【画像】「えっ!…」これが911シリーズの可能性を広げた「911ダカール」です(61枚)
ポルシェ「911」といえば、ピュアスポーツカーかグランツーリズモか、そんな議論もクルマ好きの間ではお馴染みの話でしょう。 「911」のラインナップを見れば、最もベーシック(というのも気が引けますが……)な「911カレラ」を筆頭に、クローズドコース向けの「911 GT3」もあれば、長距離高速ツアラーたるターボ系モデルも存在しますから、先の議論は「いずれも正解」というところでしょう。 一方で「『911』といえばラフロードを駆けるラリーカーだ」と主張する方は、極めて少数派だとは思いますが、実はこれもまた「正解」といえるかもしれません。 地下駐車場で初めて対面した「911ダカール」は、居並ぶ高級車の中にあって、白×ブルーのツートーンカラーをまとったボディがひと際存在感を放っていました。サイドに記されるロゴこそ「Rothmans」ではなく「Roughroads」ではありますが、そのカラーリングは1970~1980年代の白熱したモータースポーツシーンを駆け抜けた“ロスマンズ・ポルシェ”を思わせるたたずまいなのですから。 加えて、50mmアップされた車高、ガッチリしたブロックのオールテレーンタイヤ、車体下部にのぞくステンレス製プロテクションなども、「911」というキーワードから想像するスタイルとは大きくかけ離れていました。 カスタマイズモデルとしてはいささかパンチが効き過ぎている気もしますが、これも「911」のヒストリーをたどれば真っ当といえるもの。今回の「911ダカール」の試乗車がモチーフとしているのは、1984年の第6回パリ・ダカールラリーのウィナーであるポルシェ「953」こと「911カレラ 3.2 4×4 パリ・ダカール」であり、ドアに記されたカーナンバーも栄冠に輝いた名マシンのオマージュであることを示しています。 さらにさかのぼれば、販売開始から間もない1965年に「911」は国際格式ラリーであるモンテカルロラリーに挑み、初戦にも関わらず総合5位を獲得。さらに、その後はモンテカルロラリーを筆頭に幾多のラリーで輝かしい戦績を挙げているのです。 こうした歴史を振り返れば、「911」とラリーとの深い関わりもお分かりいただけるはず。ならば今回ドライブする「911ダカール」も(ラリーに参戦するか否かはさておき……)単なる変わり種やジョークで設定されたバリエーションではないはず、と感じてきます。 とはいえ、緻密な設計で知られる「911」ゆえ、「根幹を揺るがすような腰高なモデルってどうなの?」という興味が湧いてくるのも事実。ということで、早速、試乗とまいりましょう。 ●ゴツいオールテレーンタイヤは思いのほか静か 「911ダカール」のかたわらに立って最初に感じるのは、車高が50mm高く設定されたことによる車体の迫力です。 いつもなら見下ろす位置にあるボンネットやルーフ、ドアハンドルの位置も高く感じます。実は車高が50mmアップしているとはいえ、全高は1338mmしかありません。街にあふれるSUVどころかコンパクトカーより低い数値ですが、全長4530mm、全幅2033mmという立派な体格ゆえ、数値以上の凄味が漂います。 そして、ノーマルの「911カレラ」との違いを明確に感じるのは、CFRP製フルバケットシートに腰を下ろす瞬間です。一般的なスポーツカーのように低くかがむ必要はなく、体を横移動するだけで乗り込めるのですが、これは50mmアップした車高の思わぬ恩恵でしょう。 シート本体もシェイプこそ深いものの、厚めのパッドがしっかりと体を支えてくれるので、見た目から想像するより快適です。とはいえ、リアシートに代わって車内後部に張りめぐらされたロールケージを見れば、実用性を意識しての50mmアップでないことは容易に気づかされます。 スタータースイッチをひねってエンジンを始動させると、少々荒々しいフラット6サウンドが響きます。エンジンは3リッターのツインターボで最高出力は480ps、最大トルクは570Nm。複数の仕様がラインナップされる「911」ですが、4WDの駆動方式を含め、メカニズムとしては「カレラ4 GTS」に準じた仕様となっています。 とはいえ、キャビン内には粒感のあるサウンドが響きます。リアシートがないからか、地面からの反響なのか、それとも遮音材が異なるのか、この辺りの判断は難しいものの、心地いいと感じる程度の音量アップなので、むしろポルシェ一流の演出なのかもしれません。 ブルーのステッチが施されたスエード調の“Race-Tex”素材で覆われたダッシュボードに、センターマーキングのあるステアリングなど、演出の効いたインテリアに緊張しつつ、8速PDKのセレクターでDを選び、公道へと踏み出します。 意外だったのは、ゴツい印象のオールテレーンタイヤが思いのほか静かだったことと、段差の通過時や荒れた路面での乗り心地のよさでしょうか。これは、フロント245/45R19、リア295/40R20とハイトのあるタイヤを履いているのに加えて、ストロークに余裕のあるサスペンションもひと役買っているようです。 この乗り心地のよさは、舞台を首都高速に移しても変わりません。例えば、ややタイトなコーナーも程よいロールを伴いながらひらりひらりとクリアしてくれますし、大き目の目地段差を超えても「トン」と音がする程度でフロアに振動が伝わることもありません。 それでいて、ドライバーのステアリングやペダル類の操作に対し、反応が遅れることがないのは、さすがのひと言。「911」らしい精度感はそのままに、身のこなしがより軽やかになった印象です。しかも、この足まわり、150km/hまでの速度域ならスイッチ操作ひとつでプラス30mmもアップできる(つまり、ベースモデル比で80mmアップ)というから驚きです。